2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on development of technological innovation by replacing meaning of existing technology, and redefinition of business domain
Project/Area Number |
18K01757
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
奥居 正樹 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (20363260)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 業態転換 / 価値の読み替え / 技術の価値 / 脱コンテクスト化 / 再コンテクスト化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、事業コンテクストの変化に伴う技術の価値の読み替えという観点から業態転換に関する文献調査と国内企業の事例調査に取り組んだ。 これまでの調査では、企業が生業とする事業とは異なる領域へ転身する際、生業で用いられてきた既存技術にアレンジを加えて最適化することで、新しい業態では唯一無二となる事例を検討してきた。ここでのアレンジとは、事業コンテクストの違いによって既存技術の使い方を変えることを指す。一方、本年度はこれとは異なる業態転換の取り組みに焦点を当てた。具体的には、本業と異なる領域で副業を多角化した後、本業からの撤退とともに副業から派生した新たな本業を再定義するという事例に着目した。 訪問調査の結果から、本業以外の異なる領域で副業を始める目的は経営の安定化が挙げられるが、そのきっかけは特異な事業環境からの脱却や取引先が抱える課題解決であった。これは自社がこれまで考える機会のなかった問題意識を持つこととなり、その解を導出することが技術開発のブレークスルーや思考様式の更新につながっていた。つまり、生業だけを視野に入れていた狭い事業コンテクストから理念やパーパスといった抽象化された大枠の下で脱コンテクスト化し、これまで視野外であった新しい領域に具体的に焦点を当て直すという再コンテクスト化が図られたと考えられる。そして市場環境の変化などにより本業が苦境に陥ると多角化した副業が経営の拠り所となるのだが、副業をそのまま継続するのではなく、自社の理念に照らし合わせた新しい事業が再検討されたうえで始動していた。ここでも副業そのものが自社の存在理由は何かという抽象化された理念の下で脱コンテクスト化され、そして自社の価値観に照らし合わせた事業ドメインが再定義されていると考えられる。こうした企業では、製法のアレンジではなく機械を使いこなす技術が事業コンテクストによって読み替えられていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
調査研究に遅れが生じているのは、新型コロナ感染症の影響により国内外の移動に深刻な制限がかかり、企業からの調査協力も得にくくなっているためである。特に昨年度に引き続き本年度も欧州での調査を見送らざるを得ず、本研究の主要調査が先送りとなっている。加えて国内においても大都市圏を中心に移動制限が続いたため、訪問調査が先送りとなった。そのため研究計画に対して遅延が生じているが、可能なかぎり挽回に務める。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は世界規模でのワクチン接種が進むと期待されるが、まだまだ企業が落ち着きを取り戻すまで時間を要すると見込まれる。それまでの間は、技術の価値(意味)読み替えによって新しい市場を模索する経緯とそのきっかけについて、文献調査を中心に検討を進める。併せて広島県内をはじめとした国内企業の調査に取り組み、調査結果のとりまとめを行う。 調査対象として新たに検討するのは大正・昭和初期に地域特産品を製造していたメーカーである。業態転換は生業とする本業の不調がきっかけで異なる事業領域へ展開することから、特産品として市場を支えた企業の現在に至る経緯を調査することで事業再定義の方策を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、予定していた国内・国外企業への訪問調査が先送りとなったため次年度使用額が生じた。 そのため、2021年度に速やかにワクチン接種を済ませ、各国政府の移動制限ならびに国内の感染状況が落ち着き次第、訪問調査を実施する。具体的には、緊急事態宣言解除が見込まれる8月より国内企業への訪問調査を、そしてワクチン接種後の海外渡航解除が見込まれる2022年2月より欧州企業への調査を計画する。
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Research Products
(2 results)