2021 Fiscal Year Research-status Report

Study on development of technological innovation by replacing meaning of existing technology, and redefinition of business domain

Research Project

Project/Area Number	18K01757
Research Institution	Hiroshima University
Principal Investigator	奥居正樹広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (20363260)
Project Period (FY)	2018-04-01 – 2023-03-31
Keywords	事業転換 / 技術の価値 / 領域探索 / 文脈導出
Outline of Annual Research Achievements	本年度は、事業コンテクストの変化に伴う技術の価値の読み替えという観点から、衰退しつつある地場の伝統産業企業の事業転換の事例調査に取り組んだ。本年度の訪問調査で焦点を当てたのは、新領域の探索に至る文脈（流れ）の導き出し方とそれを実現する自社技術の使われ方である。衰退する地場産業から異業種へ事業転換を果たした企業での調査結果では、生業とは全く異なる他領域へ技術を転用するような横展開、すなわち技術を字義的に取り扱い、それを直接別領域に流用するような取り組みは失敗に終わっている。しかし、生業から派生するニーズに焦点をあてながら業界常識では見落とされている価値に目をつけ、いち早く提供するような取り組みでは成功している。前者が失敗する理由は、横展開する領域では過去から連綿と技術力を高めてきた業者との競合となり、よほどの革新的な技術的優位性か価格競争力を持たなければ敗退するためと考えられる。一方、後者が成功した理由は、高度化した顧客ニーズを満たすために、生業以外の課題に目を向け、その解決にあたって自社技術の機能的価値に固執すること無く、新しい技術の構成要素として部分的かつ柔軟に利用したことが挙げられる。そこでは、自社技術を従来どおりの型で用いるのではなく、新しい用途に合わせた新しい型を作り出すための要素として間接的に用いている。こうした取り組みが新しい価値を生み出す独自技術へと昇華し、それが結果的に生業とは異なる領域へ事業転換する道筋をつけることが示唆された。事業転換では新規領域の探索とその実現が課題となるが、調査結果では既存事業で見つけた副次的な課題や業界常識では見落とされている価値に焦点をあて、その解決のための方策を深掘りするというプロセスの実践が発端となっている。こうした解決のための取り組みが、新しい事業領域に転換するための文脈を導き出すことになると考えられる。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 調査研究に遅れた生じているのは、新型コロナ感染症及びロシア・ウクライナ危機の影響により、国内外の移動に制限がかかるだけでなく、企業からの調査協力も得にくくなっているためである。特に欧州での訪問調査は昨年度に引き続いて本年度も見送らざるを得ず、本研究の主要調査が先送りとなっている。国内においても移動制限が尾を引いており、訪問調査が先送りとなっている。そのため、研究計画に対して遅延が生じているが、可能な限り挽回に努める。
Strategy for Future Research Activity	2022年度は世界規模でのワクチン接種が進み、ロシア・ウクライナ危機も沈静化することを期待するが、企業が落ち着きを取り戻すまでには相当の時間を要することが見込まれる。それまでの間は新領域探索（発見）にあたっての文脈の導き方について、文献調査とともに国内企業を中心とした調査を進める。具体的には中国地方を中心とした伝統産業の事業転換例に焦点を当て、追加調査に取り組み、調査結果のとりまとめを行う。海外（欧州）企業の訪問調査については、監督官庁の指示等に従いながら、できるだけ早期に実現するよう努める。
Causes of Carryover	新型コロナ感染症やロシア・ウクライナ危機の影響により、予定していた国内・海外企業への訪問調査が先送りとなったため、次年度使用額が生じた。各国政府の移動制限並びに国内の感染状況が落ち着き次第、訪問調査を実施する。具体的には、海外（欧州）については2022年8月以降、国内企業については6月より調査を計画する。