2018 Fiscal Year Research-status Report
海外進出中小企業の「出口戦略」-海外での新事業展開の可能性-
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18K01773
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
兼村 智也 松本大学, 総合経営学部, 教授 (70367548)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中小企業 / 海外進出 / 新事業展開 / 東アジア / 優位性の移転 / 経営資源 / 参入障壁 / 気づき |
Outline of Annual Research Achievements |
三年間の初年度にあたる平成30年度はパイロット研究として地域企業2社を対象に調査・研究を実施した。 その結果、東アジアで新事業展開が可能になるのは、そこに「確実な需要分野」があることが大きい。その結果、販売先の問題が解決、リスクも低減される。また新事業では自社にない資源が必要になるが、この獲得についても「確実な需要分野」の存在が外部調達を可能にしている。このように需要側・供給側が揃う東アジアでの新事業展開はリスクや困難を抱える日本に比べ明らかに有利な環境にあることが明らかになった。これは現地の進出中小企業のみに与えられるチャンスでもある。なぜなら現地にいないと「確実な需要分野」への「気づき」を得られないし、この「気づき」を含め、未進出企業の進出や同分野への参入にはその「産業特性」や「経営資源の限界性」といった「障壁」があるからである。もちろん進出中小企業にも、日本本社社長の現地市場への関心、新事業展開を可能にする体制など同分野に参入するのも一定の条件が必要である。 さらに、これは進出中小企業に成長をもたらすだけではなく、経営資源を供給する支援者や東アジアに拠点を持たない関連事業者からも連携先として依頼を受けるなど、その経済的効果が広く波及することが明らかになった。ここへの支援の政策的意義は大きい。 また本研究の学術的貢献であるが、従来、ハイマー(1976)が指摘する「優位性の移転」は本国本社からの移転であったが、このケースは他社からである。この「優位性の移転」の理論は多国籍(大)企業を前提としているが、東アジアへの進出が大企業から中小企業へと広がり、その時間も経過するなかで、こうした現象が従来の理論の枠内に収まらなくなっていることを指摘したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究で得た資料・データを使うことにより、海外調査を実施しなくても、パイロット研究としての成果を収めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】でも記したように30年度については既存の資料・データをもとに論文一本を取りまとめることができたが、東アジアのなかでも対象はASEANの2ヵ国に限定されていた。既存の事例に加え、今後、より主張に深みをもたすために中国や他のASEANでのケースも分析対象とする予定である。その資料・データ収集として必要な国内外の調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、計画していた海外調査の実施が先送りになったためである。平成30年度は調査対象となる企業を発掘・選定するため国内調査に注力した。令和元年度は引き続き国内調査を実施するとともに海外調査も実施していく。
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Research Products
(3 results)