2021 Fiscal Year Research-status Report
邦銀の再国際化戦略の変質と邦銀インド支店の業務分析:フォロワー型から現地化へ
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18K01791
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
西尾 圭一郎 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (20453368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 邦銀の海外展開 / インド金融システム / コロナ下の金融機関経営 / デジタルエコノミー / フィンテック / バランスシート分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の主な研究成果は、コロナウイルス感染症拡大の初期を含む2010年代後半の邦銀のインド支店のバランスシート分析を行ったことである。2010年代末から2020年代初頭にかけての邦銀の海外活動は、それまでの拡大傾向から縮小に転じ始めた。それはコロナウイルス感染症拡大の影響が多いと思われる。その間、インドの銀行部門は拡大こそ続けていたが、不良債権問題もありその拡大ペースは低下していた。この点では銀行部門へのコロナウイルス感染症拡大の影響は共通したものであると予想できる。その間、指定商業銀行は抑制的な活動を行っていたが、外国銀行部門はペースダウンしつつも成長速度がインド国内の銀行を上回っていた。不良債権比率も外国銀行はインドの銀行の半分程度であり、一口にインドの銀行システムという形で一括りにすることができない状況である。さらに、邦銀の資産規模の拡大ペースは、外国銀行以上であり、この間に急成長していることが分かる。 このことからは2つの点が分かる。一つは邦銀全体の動向とインド支店の動きが、やはり異なっているという事である。もう一つはインドの銀行全体よりも外国銀行の方が活発に規模を拡大していること、邦銀はさらに拡大ペースが大きい事である。ただし、本年度はコロナウイルス感染症による公私にわたる影響から、収益状況にまで踏み込んだ成果を出すことができなかった。収益状況についても、データベースの整理は行っていないが、確保はできている。 また、前年度より継続している銀行を取り巻く環境の分析として、フィンテックや競争相手、補完相手のノンバンク分析など、金融システム全体の構造分析は継続して行えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の箇所でも記載したが、公私にわたるコロナウイルス感染症拡大の影響は大きく、体調面、スケジュール面での調整の失敗が研究を完成させることができなかった理由である。それゆえに2010年代から現時点までの邦銀インド支店の分析が資産・負債面にとどまっており、次年度には収益状況についても取りまとめて完成させる予定である。論文としては、2021年度には「2010 年代のインドにおける邦銀の活動状況」(1)を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
資産・負債面にとどまっている邦銀インド支店の分析を進め、次年度には収益状況についても取りまとめる。2022年度には論文の続きを書き、(2)として発表する。昨年度、コロナウイルス感染症拡大の影響により詰め切れなかった部分を取りまとめるため、着実に実施するだけで十分に達成できると予想している。 また、銀行を取り巻く環境の分析として行っている、フィンテックや競争相手かつ補完相手であるノンバンク分析などについても、学会発表を行ったり書籍の1部として刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
一時期、コロナウイルス感染症に関する動向に終息が見られ、海外活動の可能性が出るのではないかと考え、その活動について模索を続けたが残念ながら正常化まではまだ遠かったため、海外活動の予算を繰り越すこととした。また、年度末に研究成果の一部を発表するにあたって、インド中央銀行のデータベースへのアクセスができない時期があり、その結果入手できなかったデータがあるため、その分析を次年度に行う必要が出たため、もう1年分の研究活動の継続に必要な資金を残し、繰り越しておく必要が生じた。 次年度は、インド進出邦銀の収益分析を行い、それを発表するために必要となる資料の購入や研究会参加、プリンタトナー等の消耗品購入などに活用し、研究の一旦の完成を目指す。
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