2019 Fiscal Year Research-status Report
海運業界における運航自動化が社会ネットワークに及ぼす影響
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18K01794
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤川 なつこ 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (30527651)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク / 自動化 / リスクマネジメント / 組織事故 / 組織不正 / 企業不祥事 / 高信頼性組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、社会ネットワークの関係構造が事故の防止あるいは発生に及ぼす影響に焦点をあて、海運業界における運航自動化の進展が社会ネットワークの関係構造に及ぼす影響を解明すべく、研究を進めている。 研究実施の2年目である2019年度は、先行研究のレビューを通じて、自動化が社会ネットワークに及ぼす影響に関する理論的枠組みを構築するとともに、過去の組織事故および組織不正の事例研究を通じて、社会ネットワークの関係構造と、組織事故および組織不正の発生の関係に関する分析を行った。 第1に、情報漏洩の視点から自動化のリスクを分析し、情報漏洩のタイプを4つに分類するとともに、それらのリスクに対する対策を提示した。第2に、組織不正の事例研究を通じて、不正が組織化される原因に関する考察を行った。第3に、組織事故研究の枠組みに基づいて導出した組織不正の発生メカニズムを、組織不正事例と照らし合わせ、その妥当性を検証した。第4に、組織不正を4つのタイプに類型化し、そのうち、①意図的組織不正および②無自覚加担型組織不正、について事例研究を通じて比較・分析することで、両者の醸成メカニズムの異同について明らかにした。 上述した研究内容のうち、情報漏洩の企業リスク分析および企業不正の組織化に関する考察は、国際学会での発表という研究成果に繋がった。また、組織事故研究の視点を用いた組織不正の分析および組織不正の醸成メカニズムに関する企業不祥事事例の比較研究は、国内学会での発表という研究成果に繋がった。 以上のように、2019年度の研究を通じて、社会ネットワークの関係構造が創出するリスクの解明および社会ネットワークが高信頼性組織化するために求められる条件の解明が進められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、先行研究のレビューを通じて、自動化が社会ネットワークに及ぼす影響に関する理論的枠組みを構築するとともに、過去の組織事故および組織不正の事例研究を通じて、社会ネットワークの関係構造と、組織事故および組織不正の発生の関係に関する分析を行った。これらの研究内容は、国際学会および国内学会での発表という研究成果を残した。 以上のように、2019年度においては、社会ネットワークの関係構造が創出するリスクの解明、および社会ネットワークが高信頼性組織化するために求められる条件の解明を進めることができた。しかしながら、2020年3月に予定していた国際学会での発表は、COVID-19の感染拡大の影響を受け、発表を中止せざるを得なかった。また、次年度以降に実施予定である、過去の海難事故の事例研究を通じた社会ネットワークの関係構造と事故の関係に関する研究に向けた準備という点では課題を残している。したがって、研究達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、5年の期間をかけて、海運業界における運航自動化の進展が社会ネットワークの関係構造に及ぼす影響に関する研究を行う。 研究実施の3年目である2020年度は、技術と組織の関係に焦点をあて、先行研究のレビューおよび事例研究を通じて、組織事故の発生メカニズムを解明するとともに、自動化が社会ネットワークの関係構造にどのような変化をもたらしているのかに関して分析を行う。 以上の研究を通して、海運業界における船舶運航の自動化の影響について、社会ネットワークの観点から分析を試みることで、運航自動化がもたらすリスクを管理し、安全性と効率性を向上させるためには、どのような条件が求められるのかについて探究していく。 2020年度以降の研究を推進していく上で、COVID-19の様々な影響が想定される。オンラインでのインタヴュー調査や研究成果発表などの実施を通じて、感染防止対策を講じながらも研究を推進していけるように、調査方法や成果の発信方法に関しても試行錯誤を行っていく。
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Causes of Carryover |
(理由) 2019年度は、理論研究に主軸を置いて研究を実施したことにより、調査旅費が当初の予定より少額であっため、次年度使用額が生じた。また、2020年3月に予定していた国際学会での発表が、COVID-19の感染拡大の影響を受け、発表を中止せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 設備備品費:関連研究の精査のための書籍・資料入手費用、旅費:調査・研究打合せ・学会発表のための旅費、その他:英文校閲費
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