2020 Fiscal Year Research-status Report
海運業界における運航自動化が社会ネットワークに及ぼす影響
Project/Area Number |
18K01794
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤川 なつこ 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (30527651)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 社会ネットワーク / 経営組織 / リスクマネジメント / 組織事故 / 組織不正 / 高信頼性組織 / 自動化 / 技術経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会ネットワークの関係構造が事故の防止あるいは発生に及ぼす影響に焦点をあて、海運業界における運航自動化の進展が社会ネットワークの関係構造に及ぼす影響を解明すべく、研究を進めている。 研究実施の3年目である2020年度は、技術進歩の陰で看過されやすい経営組織の不適合および逆機能について技術と組織の関係から分析を行うとともに、不適合および逆機能がどのようにして組織事故に繋がるのかを探究した。第1に、技術と組織を巡る先行研究を①技術決定アプローチ②技術構成アプローチならびに③統合アプローチに分類し、その技術観の異同について明らかにした。第2に、経営組織における不適合と逆機能の概念を環境―技術―人間の関係から明確にした。第3に、組織事故の理論モデルを提示するとともに、組織事故の原因を不適合と逆機能の観点から分類した。 上記の組織事故の視点から技術進歩のもたらす経営組織の逆機能を考察した研究は、経営学史学会での発表、投稿ならびに査読を経て、学会誌である経営学史学会年報第28輯に論文掲載されるという研究成果に繋がった。また、組織不正の醸成メカニズムに関する企業不祥事事例の比較研究は、国際学会での発表という研究成果に繋がった。 以上のように、2020年度の研究を通じて、技術進歩によってもたらされる社会ネットワークの関係構造の変化に起因する不適合と逆機能の解明ならびに社会ネットワークが高信頼性組織化するために求められる経営管理の解明が進められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、先行研究のレビューを通じて、技術進歩がもたらす経営組織の不適合と逆機能に関する理論的枠組みを構築するとともに、組織事故の発生プロセスならびに発生原因を環境―技術―人間の関係から分析を行った。これらの研究内容は、学会発表ならびに学会誌に論文掲載という研究成果を残した。 以上のように、2020年度においては、技術進歩によってもたらされる社会ネットワークの関係構造の変化に起因する不適合と逆機能の解明ならびに社会ネットワークが高信頼性組織化するために求められる経営管理の解明を進めることができた。しかしながら、研究計画策定当初に予定していたインタビュー調査は、COVID-19の感染拡大の影響を受け、実施が困難な状況にある。また、次年度以降に実施予定である過去の海難事故の事例研究を通じた社会ネットワークの関係構造と事故の関係に関する研究に向けた準備という点では課題を残している。したがって、研究達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、5年の期間をかけて、海運業界における運航自動化の進展が社会ネットワークの関係構造に及ぼす影響に関する研究を行う。 研究実施の4年目である2021年度は、海難事故の事例研究を通じて、組織事故の発生メカニズムを解明するとともに、自動化が社会ネットワークの関係構造にどのような変化をもたらしているのかに関して分析を行う。 以上の研究を通して、海運業界における船舶運航の自動化の影響について、社会ネットワークの観点から分析を試みることで、運航自動化がもたらすリスクを管理し、安全性と効率性を向上させるためには、どのような条件が求められるのかについて探究していく。 2021年度以降の研究を推進していく上でも、COVID-19の様々な影響が想定される。オンラインでのインタビュー調査や研究成果発表などの実施を通じて、感染防止対策を講じながらも研究を推進していけるように、調査方法や成果の発信方法に関しても試行錯誤を行っていく。
|
Causes of Carryover |
(理由) 2020年度は、COVID-19の感染拡大の影響を受け、学会がオンラインで開催されたことにより旅費が当初の予定より少額であっため、次年度使用額が生じた。また、研究計画策定当初に予定していたインタビュー調査の実施を延期せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 設備備品費:研究データの分析のためのソフトウェアならびに関連研究の精査のための書籍・資料入手費用、旅費:調査・研究打合せ・学会発表のための旅費、その他:英文校閲費
|