2021 Fiscal Year Research-status Report
セミ・オープンイノベーションによる地域中小企業の新規事業展開の支援に関する研究
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18K01797
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
板谷 和彦 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (70727023)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オープンイノベーション / 中小企業 / 新規事業 / 地域活性化 / 産学連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去年度に調査したデータに基づき、「創発」という視点で再考察をはかった。数年間にわたり地域における中小企業の秀でた新規事業創出の事例を調査してきた。そこで見られた特徴は,「創発性」という言葉で括られる。創発性とは,要素を統合したシステムにおいて,要素の総和だけでは予想できない特性や特徴が出現することを言う。創発性を呈する新規事業は,これまでに前例がない価値や便益の提供を可能にするため,容易に模倣されにくく,競争優位の維持も可能にする。当初の計画に対して地域という周縁性が引き起こす様々な課題や制約に阻まれる中で,意思決定した選択が新規事業創出の鍵になっていた。 新規事業を目ざし,望ましいと思う計画や方策で開発を進めるが,顧客の要求が想定とはかけ離れていたり,材料の物性の本質理解が必要な課題解決に迫られたりと,当初の計画通りには進まず,方針の廃棄,解決のための迂回・軌道変更,様々な飛躍を含む試行錯誤を経て事業化にたどりついている。地域のシーズを起点に目標や計画に過度に縛られることなく社外との臨機応変な交流を可能にするセミ・オープンイノベーションモデルは,第一義的にはこうした取り組みに有効であるものと考えられる。新規事業を開発している途中では,経営トップも技術課題の本質を理解し,的確な意思決定が求められることもある。総じて,社外から取り入れた,当初のシーズ技術はプロトタイプを作り上げるまで有効だが,想定外の顧客の要求や技術課題に対峙して,搭載技術の大幅な見直しなどを経て,創発的に,「思いもよらなかった」方向へと柔軟に舵を切る姿勢が新規事業創出の真の成功への鍵となっていることが明らかとなった。これらの結果は学会発表1件、論文発表1件に研究成果として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症拡大のため追加調査などが困難だったが、過去年度の調査データを新たな視点で再考察し、学会発表1件、論文発表1件に成果として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はオンラインも活用するなどして新規調査にも鋭意努力するとともに、地域企業の経営者へのフィードバック、国際的な発表にも結実させていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大のため、投稿済みの国際会議は再延期となり、予定していた海外出張も中止となった。次年度はオンラインも活用するなどして、代替策も確実にした上で、新規調査にも鋭意努力する。 地域企業の経営者への研究成果のフィードバックも加速する。
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