2019 Fiscal Year Research-status Report
ダイバーシティ経営と企業業績との因果関係の再考察を通じたより有効な経営政策の提言
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18K01810
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
萩原 統宏 明治大学, 商学部, 専任教授 (40314348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 洋史 明治大学, 商学部, 専任教授 (00239980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経営戦略 / ダイバーシティ / 労務管理 / 企業評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心的な実績として、昨年度秋期の経営システム学会において、「ダイバーシティ経営と企業業績との相互作用に関する事実確認」という題目で報告を行い、下記の成果を公表した。 まず、ダイバーシティと企業業績との相互作用についてであるが、従業員女性比率を業界平均対比で高めることによって、ROAは向上する。この効果は、労働力不足の状態・ダイバーシティが低い業界にある企業の場合、ダイバーシティを高める強い効果を持つ。さらに促進されたダイバーシティの結果、残業時間が短縮されれば、ROAはさらに大きく向上する。管理職女性割合を業界平均対比で高めることは、特に従業員の少ない企業において、ROA向上効果を持つ。高いROAは、特に、ダイバーシティの低い業界に属する企業において、ダイバーシティをさらに向上させる効果を持つ。この効果に加えて、残業時間が短縮されれば、ROAとの正の相互作用は、さらに強いものとなる。部長以上女性比率については、管理職女性比率の場合と、相互作用は類似するが、ダイバーシティから収益への貢献は従業員が少ないことを要する点が異なる。ダイバーシティ促進と収益との正の相互作用を妨げる要因として低い有給取得率・長い残業時間が確認されたが、このことは、労働時間短縮の施策を平行して行うことがダイバーシティ促進政策を継続的なものにする上で有効であることを示唆している。 次に、ダイバーシティ促進による質的効果と量的効果に関してであるが、職級が低いほど、強いプラスの質的効果が確認され、性別の違いが企業業績を改善する効果があることが確認された。一方、職級にかかわらずマイナスの量的効果が確認され、残業時間の長い企業が、ダイバーシティを促進しても業績を改善しないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイバーシティ経営と企業業績との因果関係に直接関わる研究は、「研究実績の概要」に記載された者を中心として、過去2年度の間、毎年、数本のペースで、学会報告・学術雑誌掲載によって報告を行ってきた。また「賃金水準に関するダイバーシティ」「多様性に対する懐疑性」「エントロピーという観点から見たダイバーシティ」という、発展的な研究側面についても、研究分担者とともに業績を公表し、学術的・実務的示唆を質・量ともに高めるべく、おおよそ予定通りの作業を行うことが出来ている。 ただし、2020年度に入ってから、報告予定であった学会の中止が相次いでおり、今まで通りのペースで作業を進められるかどうかは、かなりの不確実性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの進捗状況」において記載した内容を、最後の2020年度中も継続して試みてゆく方針である。中心的な課題である、定量分析における具体的な発展方針として、ダイバーシティ水準が低い業界に対象を絞って、ダイバーシティが促進されにくい要因について分析することが挙げられる。これによって、ダイバーシティ促進と業績との相乗効果の限界について確認するとともに、本研究で得られた示唆について、より客観的に再検証できると考える。また、分析側面に関する発展の方向性として、「分析期間の長期化」「1人あたりの売上総利益など、生産性を業績として用いる」「売上総利益に基づく収益性指標」あるいは、収益性では無く「リスク、ベータ値への影響」「資本コストへの影響」を検証することが挙げられる。さらには、「ワーク・ライフ・バランス施策、スキル・アップ、キャリア・アップ施策の有無」「特許登録件数」など、労働環境に関する定性的情報を盛り込むことによってより具体的な提言を抽出することが期待される。 「賃金水準に関するダイバーシティ」「多様性に対する懐疑性」「エントロピーという観点から見たダイバーシティ」という、発展的な研究側面についても、研究分担者とともに業績を公表し、学術的・実務的示唆を質・量ともに高めるという点は、中長期的な観点から、有意義な作業として特に促進したい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に複数の学会報告を予定していたが、学会が全て、直前に開催中止となったため、その旅費・参加費について、他の用途に使用する期間が無かったため。
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Research Products
(7 results)