2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of utilization of joint venture experience toward building an alliance capacity
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18K01817
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
趙 偉 中部大学, 経営情報学部, 教授 (60303583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
小室 達章 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (00335001)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会-技術システム / 組織文化 / 知識移転 / 合弁企業 / アメリカ労働組合(UAW) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4ヶ年計画で実施され、第3年度にあたる2020年度はコロナ感染拡大の影響で、対面でのインタビュー調査やヒアリング調査を実施することができず、文献や資料を整理することでの理論研究を中心に行った。2019年度に引き続き、国際合弁企業の技術移転に関する先行研究と、国際合弁企業における労使関係に関する資料を整理・分析した。 国際合弁企業の技術移転に関する先行研究を整理することで、国際合弁企業における技術移転の場合、競争力を高めるために、いわゆる技術移転だけではなく、企業文化が如何に構築するかは重要であることを明らかにした。特に、文化の違いやそこから生じる実践を取り入れる方法を分析するという着想を得た。具体的には、①国際合弁企業においては、一方のパートナーの文化は提携の支配的方法として用いられうるという側面への注目である。②両パートナーの文化や実践が共存することもあるが、提携の異なった局面に用いられるという視点である。③パートナーの実践を統合し、そこからシナジーを引き出そうという試みへの着目である。このように、異なる文化への個人の適合、異文化間のスタッフのコミュニケーションの促進、そして異文化出身者によるチームの有効性向上などを含めて、国際合弁企業における技術移転について考察していく必要性を明らかにできた。 労使関係に関する資料については、合弁企業NUMMIにおける労働協約書の分析を進めている。NUMMI成功の1つの原因として、労働組合(UAW)からの経営への協力にあると言われてきた。合弁企業では、社会システムの構築において、UAWの役割を明らかにする必要があると考えられる。本研究はNUMMIの労働協約書を全て所持している。4年ごとの更新において労働協約書の内容がどのように変化しているのかを分析することによって、NUMMIの社会システムの形成の仕組みの解明につなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由は、コロナ感染拡大により調査や研究会など対面の研究活動はすべて中止したため、本研究は予定通り聞き取り調査を行うことができず、理論研究のみ行った。その結果、いくつかの研究の方向性を見出すことができた。 第一に、NUMMIという合弁企業の成功は「労使関係の改善」、「アメリカ労働組合(UAW)の経営への協力」にあると言われている。UAWは実際、どのように経営に関与したかについて解明するため、NUMMIの労働協約書(計7冊)を翻訳しつつ、25年間のNUMMIの歴史において、どのように変化したかについて、比較研究を行うことができる。 第二に、NUMMIに関する先行研究から、NUMMIの成功要因の1つは「労使の信頼関係である」と結論づけられる。しかし、本研究はNUMMIの前副社長らへインタビュー調査を行い、「トヨタはUAWとは関係を持ちたくない」という傾向があることは分かっている。ただし、UAWとの関係を避けることができなかったことは、UAWからの協力を得るしかないと考えられる。そうだとすれば、労使の信頼関係の構築は会社経営にとって重要になってくる。したがって、合弁企業における信頼の養成、信頼の育成プロセスを解明する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究課題の今後の推進方策は以下の3点である。 第1に、NUMMIという国際合弁企業の25年史を整理し、合弁経験から抽出されたアライアンス能力を経営学史としてまとめることである。また、これらの研究成果については、学会報告および学術論文として発表する。 第2に、NUMMI労働協約書の整理・分析し、NUMMIの成功は「労使の信頼関係にある」と言われてきた。果たして、NUMMIにおける「信頼」とは何か、「安心の日本、信頼のアメリカ」という異なる文化的特性において作られた共同体は、信頼の育成を阻害する環境である。その中で、合弁企業の業績をあげるため、労使の信頼関係は重要である。そこで、NUMMIという合弁企業の信頼とコミットメント関係はどのように形成されたかを考察し、論文として投稿する予定である。 第3に、研究会を再開し(月2回)、国内・外の学会へ参加・報告を行い、国際合弁や知識移転に関する学識経験者との意見交換を行う。NUMMIという国際合弁事例の普遍性を抽出し、知識移転や社会システムの構築などの研究につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ感染拡大の影響で、対面でのインタビュー調査やヒアリング調査を実施することができなかった。また、予定していた国際学会と国内での学会報告がオンライン開催となったため、予定していた旅費を使用しなかった。 次年度は、前年度調査できていない関連分野の資料の購入費、また新たな現地資料の調査が必須のため、感染状況にもよるが対策を実施した上での現地資料調査の旅費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)