2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of utilization of joint venture experience toward building an alliance capacity
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18K01817
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
趙 偉 中部大学, 経営情報学部, 教授 (60303583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
小室 達章 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (00335001)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アライアンス能力 / コミットメント / 知識移転 / 合弁企業 / 労使の信頼関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,2021年度,COVID-19完全拡大の影響で、対面でのインタビュー調査やヒアリング調査が実施できないまま,以下のように文献や資料を整理することの理論研究を中心に行った。 第1に、NUMMIにおける労使関係に関する資料の内容分析である。NUMMIにおける労使関係について,労働協約書の内容分析を進めている。NUMMIの成功要因の1つとして、労働組合(UAW) からの経営への協力があると言われてきた。NUMMIの成功要因を特定するためには,労使関係という社会システムの構築において,UAWの役割を明らかにする必要があると考えられる。そのため、2020年度に引き続き,NUMMIの労働協約書を分析した。NUMMIの労使関係に関する資料の内容分析については,現在,論文に執筆しているところである。 第2に、「信頼」概念に基づいてNUMMIにおける労使関係がどのように構築されたかを分析した。NUMMIが存続した四半世紀の間に,従来のアメリカ型の労使関係と日本型の労使関係の折衷的または混合的なあり方を模索しつつ,NUMMIでは新しい労使関係を構築してきた。NUMMI研究の第一人者であるP. S. Adlerによれば、「NUMMIの労使関係はトヨタとアメリカ労働組合の伝統とのハイブリッドの象徴であり,それは労使相互の信頼関係により導いたものと結論付けられている。また,私たちがこれまでに行ってきたNUMMI関係者へのインタビューにおいても,「信頼関係の構築」というワードが繰り返し語られてきた.しかしながら,「信頼」が何を意味するのかについては,それ以上の研究はなされなかった。そこで,本研究は、山岸(1997)における信頼理論を研究フレームワークとして,NUMMIの労使の信頼関係はどのようなアプローチで構築されたかを分析した。信頼理論に基づく労使関係の分析は国際学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
やや遅れている理由は、COVID-19の感染拡大により調査や研究会など対面の研究活動はすべて中止したため、本研究は予定通り聞き取り調査を行うことができなかったことである。しかしながら,資料の内容分析や理論研究を実施することで,研究の方向性を新たに見出すことができた。 第1に、NUMMIの労働協約書を内容分析である。NUMMIという合弁企業の成功は「労使関係の改善」、「アメリカ労働組合(UAW)の経営への協力」にあると言われているが,UAWは実際、どのように経営に関与したかについて解明する必要性を提起することとなった。そのため,NUMMIの労働協約書(計7冊)を翻訳しつつ、NUMMIの労使関係はどの時点で変化したか、また、その関係は「信頼」から「安心」にシフトしたか明らかにしているところである。 第2に、「信頼」を鍵概念とした分析である。NUMMIに関する先行研究では、NUMMIの成功要因の1つは「労使の信頼関係である」と結論づけられる。しかし、ここでいう「信頼」とは何か、どのようなプロセスで「信頼」が構成されているのかは論じされていない。本研究では,山岸俊男(1997)の「信頼の解き放ち理論」をベースにして,また,私たちがこれまでに収拾してきた膨大なNUMMI に関する資料を活用して,国際合弁企業における信頼関係の構築プロセスを明らかにすることの必要性を見出した。ここで以下の仮説を提示する。すなわち、NUMMIでは、「低コミットメント×低信頼」のアメリカ型労使関係とも、「高コミットメント×低信頼」の日本型労使関係とも異なる、「高コミットメント×高信頼」という第三の労使関係が目指され,実現される。今後,この仮説を論証できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の今後の推進方策は以下の3点である。 第1に、NUMMIという国際合弁企業の25年史を整理し、合弁経験から抽出されたアライアンス能力を経営学史としてまとめることである。また、これらの研究成果については、学会報告および学術論文として発表する。 第2に、NUMMI労働協約書の整理・分析した成果を発表することである。NUMMIの成功は「労使の信頼関係にある」と言われてきた。そのため,労働協約書の内容分析を通じて,NUMMIにおける「信頼」とは何かを明らかにしていく。また,「安心の日本、信頼のアメリカ」という異なる文化的特性において作られた共同体は、信頼の育成を阻害する環境の中で、合弁企業の業績をあげるためには、労使の信頼関係は重要であるため、NUMMIという国際合弁企業の信頼とコミットメント関係はどのように形成されたかを考察し、論文として投稿する予定である。 第3に、対面での研究会を再開することである(月1回)。研究会を通じて,議論を整地化し,国内外の学会において報告を行い、国際合弁や知識移転に関する学識経験者との意見交換を行う。 第4に,可能であれば,旧NUMMIの関係者へ聞き取り調査を行い,仮説を検証する。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響で、対面のヒアリング調査にかかる費用がかからなかったである。次年度においては、アメリカ現地へのヒアリング調査のために費用として使用すると共に、国内学会、国際学会での発表の旅費と参加費として、また、学術論文の投稿に際しての英語の校閲費にも充てる予定である。COVID-19感染拡大が改善されなく、対面のヒアリング調査が制限される場合、アンケート調査を実施する。また、研究分析に必要とするパソコンを購入する予定である。
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Research Products
(1 results)