2019 Fiscal Year Research-status Report
これからの「創造的な働き方」を支える組織変革と組織学習の統合的探求
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18K01818
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
安藤 史江 南山大学, 経営学部, 教授 (70319292)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組織学習 / 組織変革 / 働き方改革 / 女性の就業継続 / マイノリティ / マジョリティ / ダイバーシティ&インクルージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまで蓄積したデータおよび先行研究のレビューを元に、「働き方改革」など組織における新たな働き方の潮流に関する現状の把握、および仮説の構築、検証に取り組んだ。トピックスとしては2点ある。1つは、子供をもつ働く女性が現在の組織や雇用慣行をどう捉え、どう向き合い、時に折り合っているのか、それは組織が目指す理想の姿とどの程度正しい方向で合致しているのかという点である。もう1つは、ダイバーシティ&インクルージョンといったとき比較的焦点をあてられるのは、働く育児期女性のような組織においてマイノリティにあたる当事者と、その当事者を管理・支援する上司であることが多い。しかし、彼らを取り巻く同僚、さらに直接的に関係がなくとも、組織全体の変化の中で多かれ少なかれ、その影響に直面しうるその他大勢の組織メンバーのマネジメントについてである。 分析の結果、1つ目の点に関しては、現在の雇用慣行のもとでは、現在組織が提供する諸制度は一定の効果をもつ一方、女性の活躍という点では問題を抱えていること、そのため、働き続けたいと考える女性は組織を代えて、もしくは起業・自営という道を選択せざるをえない現状があることが明らかになった。また、2つ目の点に関しては、そのようにマイノリティにとって不完全な形で進行するダイバーシティ&インクルージョンの取り組みであっても、その他大勢にあたるマジョリティの被る影響も想定外に深刻であること、全体を鳥瞰的にとらえる視点なくして、無策のまま流行りの制度を採り入れると、組織全体としては期待する方向とは真逆の結果に結びつく恐れが指摘された。部分的な改善でなく、既存の価値観に挑戦するような組織変革を行う際には、新たな施策の効果とそれがもたらす混乱や負の側面を正しく把握し、組織学習論の観点を活用して総合的な成果が少しでも上昇する策をとる必要があることが分析結果から示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
働き方改革やダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに関する組織へのヒアリング調査は予定より進まなかったが、その一方でこれまでに蓄積したデータの分析や先行研究のサーベイなどが進み、非常に興味深い知見が得られた。また、今後は、データ分析の結果に関しての追加ヒアリングや、その他のヒアリングが対面およびオンラインの形で実施できそうな状況にあり、計画としては前後するものの、進行面では大きな問題はない。 国際ジャーナルに投稿する論文化も現在進行中であり、予定よりは大幅に時間がかかっているが、少しでも完成度を高めるためであり、そうしたいくつかの遅れを考慮しても、総合的にはおおむね順調に進行していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、幸か不幸かコロナの影響で当初予定していた研究内容が部分的に見直しを必要としているが、一方で、長年硬直化してなかなか現場において変化の糸口がつかめなかった、働き方改革で目指していた事柄のいくつかが、強制的に取り入れられるようになってきている。したがって、当初予定にあったことでは必ずしもないが、こうした変化が一時的なものか、もしくは、このまま定着していくのかの推移を見守り、仮に企業間で違いが生まれた場合には、その違いを生んだ要因を検討することによって、本研究の大きなテーマの中に統合していきたい。 もちろん、それとは別に、もともと問題意識としていた女性の就業継続・育成・活躍や、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みがマジョリティも含む組織全体として与える影響などについても、引き続き、分析や考察を進めていきたい。 そのうえで、これらを総合的に統合したフレームワークの探索を行い、最終年度に向けた研究活動を徐々に進展させていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、多くのヒアリング調査を予定していたため、出張費を多く計算していたが、実際には、企業側の都合および研究者側の都合が合わず、ほとんど出張することがかなわなかった。その分、これまで蓄積している一方、分析が十分に行えていなかったデータの分析や、先行研究のサーベイなどを行ったが、それによる支出は少なく、次年度使用額が生じてしまった。 本年度もコロナなどの影響で出張が難しくなりそうだが、再度、計画を練り直して支出項目の見直しや洗い出しを行うことによって、対応したい。現在、具体的に考えているのは、データ分析に関わるソフトなどの拡充である。同時に、オンラインによるヒアリング調査が増える可能性があるため、そのための環境整備も進めていきたい。
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Research Products
(5 results)