2019 Fiscal Year Research-status Report
日本中小企業による国際化が日本の企業組織に変革をもたらすプロセスの解明
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18K01820
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
関 智宏 同志社大学, 商学部, 教授 (40434865)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中小企業 / 成長 / 発展 / プロセス / 国際化 / 南部経済回廊 / ケース・スタディ / 海外事業展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中小企業が有効なマネジメントによってどのように成長や発展を実現していくかという成長発展プロセスと、成長発展に寄与する国際化との2つの学術的視点から、メコン経済圏の南部経済回廊上にある諸都市において、事業展開を試みる日本の中小企業を対象に、そのケース・スタディを積み重ねることで、国際化による成長や発展のいくつかのパターンを把握し、そのパターンごとで日本の企業組織がいかに変革していくのかというプロセスを明らかにすることを目的としている。 2019年度は、2020年度から英国・オックスフォード大学での在外研究が決まったため、2020年度に配分を予定していた予算を前倒し請求し、研究対象地域であるメコン経済圏の南部経済回廊上にある諸都市、すなわちタイ・バンコク、カンボジア・シェムリアップ、ベトナム・ホーチミンへ出向き、現地にて事業展開をしている中小企業をそれぞれ数社ずつ訪問した。また英国・オックスフォード大学や、韓国・延世大学の研究者とも交流を重ねて、分析視点の精緻化を図った。 これまでの2年間に実施してきたタイ・バンコクでの一連の調査活動の成果として、日本企業の国際化(製造業におけるタイでの事業展開)が経済社会にもたらした諸点を明らかにした論文を、研究成果の一部として執筆し、雑誌に発表した。具体的に明らかにしたのは、日系大企業が、タイの経済社会にもたらした3つの点、すなわち、①タイ国内における日系サプライヤー・システムの構築とタイのローカル企業の経営・技術・品質力向上に対するモチベーションの高揚、②日系企業のさらなる集積とタイ人の就業機会の増大、③日系大企業に従事する日本人およびタイ人の労働者を中心とした起業家予備軍の輩出、であった。この論文と同じ内容で、学内の研究所が主催する研究会において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に行う予定であった海外での調査活動を、2019年度に前倒するかたちで実施した。調査自体はスムースに行われた。また英国や韓国との研究者との交流からも、分析の視点が精緻化された。 しかしながら、元より学内業務などで海外出張に行けるタイミングは限られていたため、当初の研究計画よりは、国内も含めて調査活動を十分に行うことはできなかった。とはいえ、2020年度末くらいから深刻化してきた新型コロナウィルスの影響により、海外渡航ができない状況を考えると、実施こそ不十分ではあったが前もって海外での調査活動を行っていたことは不幸中の幸いであった。 以上の理由から、本研究課題の進捗は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、当初、英国・オックスフォード大学での在外研究が決まっていたため、渡英し、英国で最終年度の研究を深化させていく予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの影響により、英国への渡航ができなくなり、渡航できるまでの期間は国内研究員として国内で研究を進めていくことになった。 そのため2020年度には、これまで実施してきたタイ・バンコク調査活動だけでなく、カンボジア・シェムリアップならびにベトナム・ホーチミンでの調査活動の成果を発表する予定である。また、調査活動の成果をまとめていくとともに、英国ならびに韓国の研究者との交流からヒントを得た、アントレプレナーシップに関連した諸研究をレビューし、分析枠組を構築する。また、これまで企業経営者に対して実施してきたインタビュー調査から得られた質的データを分析していくための方法論についても研究を重ねていく。これらの研究成果を、2020年度中に発表していく。
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