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2019 Fiscal Year Research-status Report

サイエンスが浸透した社会におけるイノベーションの理論基盤の整備と経験的研究

Research Project

Project/Area Number 18K01836
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

松嶋 登  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10347263)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2023-03-31
Keywordsイノベーション・エコシステム / 社会物質製概念 / サイエンスの社会的実践 / イノベーション・マネジメント
Outline of Annual Research Achievements

2019年度の研究実績は,サイエンスが浸透した社会におけるイノベーションに接近するための理論的基盤の整備として,情報経営研究で脚光を浴びる社会物質性概念に関する理論的検討を行った.また,経験的研究として,大型放射光施設に媒介されるイノベーション・エコシステムを検討してきた.
第一に,理論的検討については,社会物質性概念が参照している様々な基礎学問分野のメタ理論を,その混乱を含めて批判的検討してきた.メタ理論は多岐に渡るために,様々な研究領域に精通した研究者との共同研究として進められてきた.具体的には,近年の情報経営学で盛んに議論されている社会物質性概念が参照するメタ理論には,構造化理論,アクター・ネットワーク・セオリー,制度派組織論,組織ルーティン,社会構築主義,批判的経営研究,物質的転回を企図する各種実在論が含まれる.本年度の研究では,これらのメタ理論が内在的に持つ限界まで踏み込んだ検討を行うことで,イノベーション・エコシステムを分析枠組みとして必要な理論的土台を築き上げてきた.
第二に,経験的研究としては,大型放射光施設SPring-8を題材にして,同施設を取り巻く利害関係者の分析によって,イノベーション・エコシステムがいかに進化してきたのかを分析しとしてきた.経営学における既存のイノベーション研究では,サイエンスを与件として捉えており,イノベーションはサイエンスの応用にあるとする考え方がその根底にあった.そこでは,サイエンスそれ自体も社会的実践であるという視点が欠如しており,イノベーション・マネジメントの対象として科学的実践を捉えられてこなかったと言えよう.本研究では,放射光施設に関わる利害関係者に対するヒアリングをもとに,サイエンスの社会的実践を含んだイノベーション・エコシステムを考察している.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

第一に,理論的検討に関しては,共同研究を通じて社会物質性概念に関する理論的検討を行い,その成果となる長編のレビュー論文を「社会物質性のメタ理論」として『日本情報経営学会誌(特集 社会物質性へのいざない)』に投稿した.同論文は,標準紙幅(12ページ)を大幅に超える38ページの論文となっており,同特集において極めて重要な役割を果たした.また,組織学会2020年度年次大会では,社会構築主義に関する幅広い議論がなされたが,その統一論題セッションの一つとして「構築主義が取り戻す経営学」を報告し,活発な議論を行った.
第二に,経験的研究に関しては,昨年度に行ってきたパイロット調査をベースに,追加調査と分析を加えた「イノベーション・エコシステムの進化:科学技術イノベーションの経営学に向けて」を『国民経済雑誌』に掲載した.調査では,大型放射光施設SPring-8のセンター長である石川哲也氏と東北放射光計画の中心人物である高田昌樹氏の協力を得て,科学者の社会的実践に踏み込んだイノベーション・マネジメントの可能性を見出すことができた.
以上の本年度の研究実績を鑑みるに,研究進捗はおおむね順調であると考えられる.

Strategy for Future Research Activity

今後は,以下の三点に注力し,研究を推進していく.
第一に,情報経営研究で議論される社会物質性を超えて,広く経営学で注目されている物質性概念を検討することにある.これまでは社会物質性概念に焦点を当てたメタ理論に注力してきたが,今後は広く経営学研究全体の中での物質性概念の体系化に取り組んでいく.なかでも,近年最も注目される研究のひとつに,価値評価研究がある.価値評価研究に関しては,すでに本年度から検討を始めているが,来年度には,学会誌上での新たな特集編纂など,一定の研究成果を上げることを見込んでいる.
第二に,物質性概念の隣接概念を検討していく.すでにニュージーランドのMassey大学の研究者との共同研究を開始しており,空間マネジメントに関する研究に着手し理論的な考察を,“The tentative argument of spatial management in Japan”として『神戸大学大学院経営学研究科ディスカッション・ペーパー』としてまとめてきた.
第三に,本研究の主題であるサイエンスが浸透した社会におけるイノベーションに接近するための方法として,文理融合型のアプローチを行う.すでにパイロット調査では,大型放射光施設の管理者である物理学者の協力を得てきたが,社会物質性概念のメタ理論の一つには,量子物理学者たちが自分たちの実践を顧みることから生まれた実在論哲学があった.このことは,大型放射光施設をマネジメントする物理学者の社会的実践に注目することが,本研究の主題に接近する一つの有効となる可能性があることを意味する.

Causes of Carryover

(理由)
2019年度の研究業績は,社会物質性概念のメタ概念を整理した長編のレビュー論文や,社会構成主義の原意を議論する統一論題セッション,さらに価値評価研究の基礎概念を整理した国際ワークショップなど,理論的な検討に基づくものが多かった.また,経験的研究に関しても昨年までパイロット調査の結果をもとに,追加調査と分析を加えたものであるため,研究経費があまり発生しなかった.
(使用計画)
2020年度は,2019年度の研究成果の研究成果に基づき,以下の研究費の使途が見込まれる.第一に,経営学で注目されている物質性概念に関する理論的検討の成果を,日本国内はもちろんのこと,海外にも広く発信していくために,英文の校正費用を見込んでいる.第二に,すでにニュージーランドのMassey大学の研究者との空間マネジメントに関する共同研究を開始しており,研究打ち合わせ等の経費が見込まれる.第三に,さらなる経験的研究の推進のために,追加的調査の経費が見込まれる.

  • Research Products

    (4 results)

All 2020 2019

All Journal Article (3 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] The tentative argument of spatial management in Japan2020

    • Author(s)
      Matsushima, N., Urano, M., and Sayers, J.
    • Journal Title

      神戸大学大学院経営学研究科ディスカッション・ペーパー

      Volume: 2020-11 Pages: 1-17

  • [Journal Article] 社会物質性のメタ理論2019

    • Author(s)
      松嶋登・矢寺顕行・浦野充洋・吉野直人・貴島耕平・中原翔・桑田敬太郎・高山直
    • Journal Title

      日本情報経営学会誌

      Volume: Vol. 39 Pages: 80-117

  • [Journal Article] イノベーション・エコシステムの進化:科学技術イノベーションの経営学に向けて2019

    • Author(s)
      桑田敬太郎・松嶋登
    • Journal Title

      国民経済雑誌

      Volume: 220 Pages: 23-48

  • [Presentation] 構築主義が取り戻す経営学2019

    • Author(s)
      松嶋登
    • Organizer
      組織学会2020年度年次大会
    • Invited

URL: 

Published: 2021-01-27  

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