2021 Fiscal Year Research-status Report
将来,企業による不祥事・大惨事を繰り返さないために文化を超え学習する方法論の構築
Project/Area Number |
18K01838
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
築達 延征 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 教授 (50255238)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 企業倫理 / 企業の社会的責任 / 企業不祥事 / 現象学 / 解釈学 |
Outline of Annual Research Achievements |
企業による不祥事・大惨事が繰り返されている。不祥事・事故が起こるたびに, 企業倫理及び企業の社会的責任論, 組織論, 安全学等で個別に分析・研究がなされてきた。しかしながら, 実務においては, その知識が学習されないのはなぜかという「問い」にもとづき,本研究を始めた。本研究では, 企業不祥事・惨事を繰り返さないために, 「過去の実践」から現在・将来への実践への学習理論の発展を目指し, 越文化的学習 (transcultural learning) を促進するための方法論を構築し, その効果を確かめる。
本年度は,研究3として,比較・越文化的アプローチをとり,不祥事の中でも,贈収賄に焦点をあて,考察した。比較文化的なアプローチの中でも,宗教からの影響に着目した。現象学に基く方法論を取り,不正行為を行った当時者たちが共有する「生活世界」(原語Lebenswelt,英語life-world),「生の体験」(lived-experience)を分析した。その結果,不正行為に及んだ当時者達がイスラム教の教義を自己都合で解釈し,不正行為を便法として合理化するメカニズムが明らかになった。また,「社会化」により他者にも合理化することを学習させ,組織,業界の文化・制度として浸透するメカニズムも明らかになった。日本企業社会で不祥事を誘発する集合近眼(collective myopia)という筆者(Chikudate)が提唱した病理構造がイスラム圏でも存在し,説明的妥当性を得ることができた。よって,通文化理論として発展させるべく考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も2020年度からのコロナ禍を引き継ぎ,海外はもとより国内での移動がほとんど不可能だった。特に,非常事態宣言・まん延防止等重点措置等により,勤務先の大学の服務規程・隔離方針が猫の目のように変わり,当初の研究活動が十分に実行できなかった。さらに,文部科学省からの指示を受け,勤務先の大学からオンライン・オンデマンド授業もしくは対面授業での再会を急に命じられ,授業の準備に振り回された。また,2020年4月,勤務先の大学に大学院人間社会科学研究科が設立されたことにより,会議・書類作成で多忙を極めた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に記載した研究3.「企業による不祥事・大惨事を過去から学習するための方法論の探究」を継続し,研究4.「企業による不祥事・大惨事を文化・時間を超え学習する可能性の探究」を完成させる。 具体的には,計量的手法でいう外的妥当性(一般化)ではない, ケースの「普遍化」の可能性を検討する。ここでは, Husserlの現象学を発展させる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により, 海外はもとより, 国内移動が制限された。海外での調査・学会発表に使用するはずだった旅費を次年度に使用することにした。
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Research Products
(1 results)