2020 Fiscal Year Annual Research Report
Circular causation between HRM and firm performance.
Project/Area Number |
18K01842
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 裕 東北学院大学, 教養学部, 教授 (60170362)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人的資源管理 / 企業業績 / ハイ・インボルブメントモデル / 循環的因果関係 / 交差遅れモデル分析 / 高業績労働システム / 競合価値フレームワーク / 戦略的人的資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体の目的は、HRM施策と企業業績の循環的因果関係を交差遅れ分析によって検証することであった。そこで、初年度は、HRM施策と企業業績の概念の検討、および両概念の測定モデルを開発した。翌年度は、それらの測定モデルに基づいて、時間のズレを持ったデータによって両者の因果関係を分析した。具体的には、上場企業のうち約500社の2年の時差(2012・14・16)および4年の時差(2008・12・16)のある3波データを用いて、HRM施策 (「ハイ・インボルブメント」得点)と企業業績(売上高、純利益、ROE、離職率)の関係を交差遅れ効果モデル分析で検証したところ、一部の業績指標(2年の時差では純利益、4年の時差では純利益とROE)からHRM施策への交差遅れ効果が見出されたが、HRM施策から企業業績への交差遅れ効果は見られなかった。最終年度は、上場企業のうち約800社の2年の時差(2012・14・16)および4年の時差(2008・12・16)のある3波データを用いて、HRM施策(ワークライフバランス施策)と企業業績(女性従業員の定着・昇進)の関係を交差遅れ効果モデル分析で検証したところ、2年の時差では交差遅れ効果は見られなかったが、4年の時差ではHRM施策から企業業績(女性従業員の離職率)への交差遅れ効果と企業業績(女性の勤続年数)からHRM施策への交差遅れ効果が見られた。以上の結果、HRM施策と企業業績の循環的因果関係は見出されなかった。ただし、企業業績からHRM施策への影響が見られたことは、HRM施策から企業業績への一方向の因果関係を想定する戦略的人的資源管理論の理論的見直しを迫るものである。また、HRM施策と企業業績の間の影響が2年より4年の間隔で明確に表れたことは、HRM施策の浸透・陳腐化、企業業績からHRM施策へのフィードバックプロセスを理論化する上で重要な示唆を与える。
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