2021 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド組織形態のコレクティブインパクト促進への可能性
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18K01860
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
佐々木 利廣 京都産業大学, 経営学部, 教授 (80140078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クロスセクター協働 / コレクティブインパクト |
Outline of Annual Research Achievements |
コレクティブ・インパクトに関する計14回の研究会の議論を纏めながら、企業セクターとNPOセクターと行政セクターを代表する人にも参加してもらい、『日本のコレクティブ・インパクト:協働から次のステップへ』という著書を2022年2月に中央経済社から出版することができた。 著書の内容は、第1章から第3章までが導入部にあたり、コレクティブ・インパクトの考え方や視点を中心に論じた章である。第4章から第11章までは、日本のコレクティブ・インパクトのケースを紹介した部分であり、研究会に参加し当事者として深く関与した人が纏めたケースである。コレクティブ・インパクトを他人事ではなく自分事として捉え実践してきた貴重なケースである。第12章から第14章まではコレクティブ・インパクト実現のポイントとしてインパクト評価、サポート組織、人材育成の3つを論じている。第15章は、コレクティブ・インパクト事例の解釈、コレクティブ・インパクトの本質と可能性、社会の縮図としてのコレクティブ・インパクトをまとめている。途中に挿入しているコラムは、企業・NPO・行政を代表してコレクティブ・インパクトへの大きな期待を述べている。 特に強調した点は、もともと不安定さや対立的要素を内包するセクター間に協働の架け橋を渡す場合、そこには共感システムと呼べるような関係が存在すべきであるし、一種の共振的関係を築くことが必要であることを主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本では、コレクティブ・インパクトという考え方が必要不可欠であり積極的に推進するべきであるという積極的推進派の考えと、コレクティブ・インパクトは欧米発の議論であり日本の風土には適しないという消極的懐疑派の考えに二分されている。このコレクティブ・インパクトに対する積極推進論と消極的懐疑論の議論を整理しながら、日本での普及推進に向けて何がポイントになるかを確認することが概ねできたことが一つの成果である。 さらに日本では一部の例外の除きコレクティブ・インパクトの成功例が少ない理由として、アジェンダ設定やインパクト評価の仕組みが上からのトップダウンで策定されることが多く下からのボトムアップ型の参加志向になっていないこと、効果的な連携や協働の過程についての知識が共有されていないこと、またバックボーン支援組織としての中間支援組織が未成熟であること、必要な資金や人材が十分に確保できないことなどが提起されている。 しかし日本でコレクティブ・インパクトの考え方が普及定着しない最も大きな要因は、コレクティブ・インパクトという考え方や仕組みが日本の複雑な社会課題解決のための救世主的存在として迎えられ、一種の打ち出の小槌のように考えられてきたことが大きいように考える。この点についても、いくつかの陥りやすい罠について纏めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実践的側面からコレクティブ・インパクトを実現するための戦略についても考える必要がある。たとえばある地域で生まれたコレクティブ・インパクトの実践を他の地域にどのように移転させていくかというスケールアウト戦略、またある地域でコレクティブ・インパクトが雨後の竹の子のように群生するようなエコシステムをどのようにデザインするかというデザイン戦略などは今後検討すべき課題である。
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Causes of Carryover |
昨年度は国内調査ができなかったが,今年度は調査予定のフィールド調査とインタビュー調査を行う予定である。また最終年度でもあり、昨年度著書として纏めた内容についての合評会を予定している。外部の有識者に参加してもらい、著書についてのコメントや今後の方向性について意見をもらう予定である。
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Research Products
(3 results)