2021 Fiscal Year Research-status Report
ファミリービジネスの競争優位の源泉としてのファミリー性についての研究
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18K01864
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
上野 恭裕 関西大学, 社会学部, 教授 (30244669)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ファミリービジネス / ファミリー性 / 社会情緒資産 / 長期存続 / 伝統産業 / 競争優位性 / 刃物産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「ファミリー性」の概念を応用し、日本のファミリービジネスの競争優位の源泉を明らかにすることである。そのために、2020年度に引き続き、ファミリー性に関する文献研究と事例研究を中心に研究を進めてきた。その過程でファミリー性と関係が深い社会情緒資産の概念に注目し、文献研究と事例研究を展開した。社会情緒的資産とはファミリービジネスを所有する創業者一族が、利益ではなく事業を通じて得られる非財務的な価値の追求を優先するという考え方であり、そのような資産を保有することにより、非ファミリービジネスの企業に対して競争上の優位性を持つとする議論である。 事例研究ではそのようなファミリー性と社会情緒資産を保有している刃物産業に注目し、ファミリービジネスの競争優位性を明らかにしようとした。刃物産業は伝統産業であり、地場産業として産地に集積を形成し、ファミリービジネスの要素を強く持っている産業である。また長寿企業としてその業界で長く活躍する企業も多い。長寿ファミリー企業として現在も競争優位を保有している大阪府堺市の刃物企業2社と、ドイツのゾーリンゲン地方の刃物企業2社を対象として事例研究を行った。 研究の成果として明らかになったことは、これらの企業は社会貢献・地域貢献を目指した経営理念のもと、高い技術とブランドを保有していたということである。それらはファミリービジネス特有の家族の絆により補強されており、このことはドイツ企業に特に強く観察された。また、日本企業で特にみられた特徴として、経営理念を実現するために同業者間のネットワークが活用されていた。すべての事例の特徴としては、社会貢献を実現するための戦略を明確に持っていたということがあげられる。このようなことが、伝統産業におけるファミリービジネスの競争優位につながっていることが明らかとなった。この発見事実を国際学会と論文で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献の収集、資料の収集は計画通り順調に行われているが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外の企業に対する現地でのインタビュー調査が制限され、国際比較の観点から若干の遅れが生じている。ただしオンラインを利用した調査を進めるなどの工夫でそれを補っている。また、学会も多くが中止、あるいはオンライン開催になり、発表や議論の機会が失われており、研究者との意見交換が十分に行えていない。これについてもオンラインを活用し改善を図っているが、現地での対面による情報収集に比べると得られる情報量に限界があり、若干の研究の遅れとなっている。次年度において新型コロナウイルスの感染が収束し、海外の現地企業へのインタビュー調査を再開できるようになれば、これまでの研究の遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、これまでに収集した文献、資料を分析し、事例研究で明らかとなった発見事実をもとに、ファミリー性と社会情緒資産の概念の有効性を検討し、理論の批判的検討を行い、理論の再構築、新たな概念の提唱を目指して分析を進めていく予定である。 そのために、これまで新型コロナウイルスの感染拡大により制限されていた国際比較研究を中心に実施していく予定である。海外渡航の制限が緩和された場合には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により実施できなかった海外企業の現地インタビュー調査を可能な限り実施し、より豊富なデータや情報の収集に努める。さらにこれまで構築してきたデータベースをもとに質問票調査を実施し、仮説の厳密な検証を行う予定である。 これらによって得られた研究成果を論文として投稿すると同時に、これまで中止や延期となっていた国際学会の状況を注視しながら、研究成果を発信のための学会参加、学会での研究発表を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度計画していた海外のファミリービジネス企業の経営者への現地インタビュー調査が海外渡航制限などにより実施できず、海外旅費に大幅な未使用額が生じた。また国内企業へのインタビュー調査も感染状況の悪化により中止となる場合が多く、次年度に繰り越しとなっている。ただしインタビュー予定の研究対象企業とは連絡を取り合っており、次年度に状況が改善された場合には、現地におけるインタビュー調査を実施する予定である。そのために旅費として多くを計上している。またインタビュー調査が可能となれば仮説検証を進めることが可能となり、計画し準備を進めている質問票調査にも取り組んでいく予定である。そのための郵送調査に研究費を使用する予定である。また研究結果を学会等で公表するための旅費としても、研究費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)