2020 Fiscal Year Research-status Report
Proposing an Employee Support Model Aimed to Balance Work and Treatment of Long-term Illness: Analysis of Cancer Patient Cases
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18K01865
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Research Institution | Hagoromo International University |
Principal Investigator |
池田 玲子 羽衣国際大学, 現代社会学部, 教授 (60327244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 博樹 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (60162468)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仕事と治療の両立 / 両立支援 / がん治療 / ワークライフバランス / 仕事と介護の両立 / 職場の同僚 / 職場の上司 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は仕事と治療の両立の課題に直面するものが増加する時代に備え、企業による仕事と治療の両立支援の望ましいあり方を「がん治療」の事例から明らかにすることである。高齢化社会の進展とともに、がん罹患者は増加する傾向があるが、早期発見と治療等の医療技術の向上から、QOL(生活の質)の維持はもとより就労およびキャリアの継続が可能となりつつある。がん罹患者の大半もまた、就労の継続を希望していることが、これまでの調査で明らかになっている。しかし、現実にはがんの罹患をきっかけに退職に追い込まれるケースもまた、数多く報告されている。本研究はこの仕事と治療の両立課題について、医療従事者の対応や第三者の介入ではなく「職場」に着目するものである。 2020年度は2019年11月に職場についておこなったインターネット調査(従業員数100名以上の企業に在籍する、現業職を除く男女955名)の結果を分析し、公表している。 私傷病である「がん」治療と仕事との両立を希望する際、職場の支援が必要であれば、がん罹患者自身がその旨を「職場」に伝える必要がある。2018年に実施したインタビュー調査では、「ここでの勤続は無理だ」と判断した罹患者は会社に両立相談を持ち掛けることなく、自己都合等で退職している。会社側からすると、私傷病については従業員からの申し出がなければ、対応のしようがない。では、「罹患相談が可能な職場の雰囲気」とは、どのような状況にあるのか?重回帰分析の結果、①職場のコミュニケーションが良好であること②WLBに配慮する雰囲気があること③お互いの仕事をカバーできること④精緻な働き方や休み方の制度が整備されていることではなく、有給休暇の取得しやすさが重要であること、さらに、⑤介護との両立前例があることがあきらかとなった。この成果は日本経営学会第94回全国大会で報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の研究成果については、日本経営学会第94回全国大会(慶應義塾大学 2020年9月2日~5日)で報告した後、経営行動研究学会年報第30号に2020年10月に投稿したが、コロナ禍により学会誌編集作業が遅延している。
また、コロナ禍により移動が制限されたため、聞き取り調査および共同研究部分に遅延がみられる。そのため、これらをカバーするための追調査の予定・準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の追調査を予定している。 がん患者・経験者を対象に、「両立支援について相談した」がん患者・経験者は前回調査であきらかとなった「罹患相談が可能な職場の雰囲気」がある職場に在籍していたのかを確認する。その上で、①「罹患相談」をしたことが「勤続」もしくは「不本意離職の回避」につながったのか、さらに②「罹患相談」の結果、得られた両立支援のなかで、なにが勤続に有効であったのかを明らかにするための、調査を準備している。また、この調査研究結果については日本マネジメント学会全国大会にて報告を検討している(コロナ禍により大会開催については、検討中)。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により移動が制限されたために、研究の打合せ等を延期せざるを得なかった。 今年度はこれをカバーするための追調査を予定している。 がん患者・経験者を対象に、「両立支援について相談した」事と「職場の状況」の何ががん患者・経験者の勤続・転職に影響を及ぼしたのかについて、調査準備を行っている。 第一は、前回、がん未経験者・職場の同僚を対象とした調査であきらかとなった「罹患相談が可能な職場の雰囲気」の要因が、実際に相談行動と一致するのかを、転職環境・治療の重軽等をコントロールして検証する。第二に、罹患相談の結果が「勤続」もしくは「転職」につながる要因として、「両立支援を得たこと」と差別やスティグマ等「HARMの経験」が有効なのか、さらにこのなかのなにが勤続・転職行動に影響を及ぼしたのかを明らかにしたい。これらの解は、今後企業の人事施策としてリテンションを行っていく上で、一助足りえると考える。
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