2018 Fiscal Year Research-status Report
The study of horizontal transfer of production technology in a multinational corporation
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18K01867
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤岡 豊 西南学院大学, 商学部, 教授 (30320253)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生産技術システム / 移転元における人材育成期待 / 生産技術システムの間接移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30(2018)年度は研究課題「多国籍企業における生産技術の水平移転」に関する文献研究と探索的な事例研究を実施した。 まず,文献研究を通じて,生産技術が「作用次元」と「原理次元」の2つの構成概念を使用して理解できるシステム概念であることをつきとめ,その2つの構成概念にそって生産技術システムの類型を導き出した。その生産技術システムとは,「定型生産技術システム」と「非定型生産技術システム」の2つである。本研究はそのうえで,知識移転の概念的枠組みを参考にして,「生産技術システムの要因→生産技術システムの移転過程→生産技術システムの移転の効果」という分析枠組みを構築した。まず,生産技術システムの国際移転(間接移転を含む)の要因としては,(1)生産不確実性の格差,(2)生産技術システムの移転コスト,(3)生産環境システムの類似性,(4)本社の国際経営戦略,(5)移転元における人材育成期待,(6)移転先における人材育成期待,の6つを想定した。ここでは,特に移転元における人材育成期待を生産技術システムの間接移転に特有の要因として認識するにいたった。 次に,以上の分析枠組みに基づいて,日本の多国籍企業3社(A社,B社,C社とする)に対するインタビュー調査と探索的な事例研究を行った。A社とB社では本国親工場と海外子工場に対して,C社では本国親工場に対して,それぞれインタビュー調査を実施した。インタビュー調査の実施対象者は,述べ人数でA社では17人,B社では5人,C社では7人になった。その結果,多国籍企業における海外子工場から他の海外子工場への生産技術の「水平移転」は,本国親工場から海外子工場への生産技術の「直接移転」との関わりの中で生じるものであり,特にその「直接移転」を補完するための「間接移転」として生じる経営現象であることをつきとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30(2018)年度には文献研究と本国親工場へのインタビュー調査だけを実施する予定だった。しかし,研究協力企業のご厚意によって,幸運にも海外子工場に対してもインタビュー調査を実施することができた。文献研究では,「生産技術の間接移転と多国籍企業の古典理論」,「技術移転の理論と展開」,「知識移転の概念的枠組み」,「生産技術の間接移転の分析枠組み」に関する草稿を完成することができた。そのうち,「生産技術の間接移転と多国籍企業の古典理論」については『西南学院大学商学論集』第65巻第4号で公刊することができた。他方,インタビュー調査では,日本の多国籍企業3社(A社,B社,C社とする)に対して,インタビュー調査と探索的な事例研究を行った。そのうち,A社とB社に対しては,両者のご厚意によって本国親工場に加えて海外子工場に対してもインタビュー調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元(2019)年度においては,日本の多国籍企業の海外子工場に対する質問票調査の実施を予定している。質問票調査は日本の多国籍企業における本国親工場と海外子工場の工場長に対して郵送法で実施しようと考えている。海外子工場の工場長に対しては,日本語の質問票に加えて,英語や現地語の質問票も準備して調査を実施したいと考えている。また,いずれの質問票調査に対しても,調査会社の協力を仰いで質問票の回答率を上げるように努めたいと考えている。調査結果が出たら,統計ソフトを使って,海外子工場視点の分析,海外子工場の従業員視点の分析をそれぞれ行い,研究論文にまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成30(2018)年度においては,北米地域とヨーロッパ地域とアジア地域の海外子工場3工場に対して,海外インタビュー調査を実施する予定であった。しかし,研究協力企業の都合により,アジア地域の海外子工場2工場だけに海外インタビュー調査を実施することになったので,結果的に旅費に残額が生じてしまった。次年度の令和元(2019)年度においては,その旅費の残額と当初の助成金を合わせて使用し,大規模な質問票調査を実施したいと考えている。当初の研究計画では,経費上の制約から海外子工場のみを調査対象とする予定であったが,予算に余裕が生じることになったので,海外子工場で働く現地従業員も調査対象にすることにし,本研究課題である生産技術の間接移転をより多角的に分析するように努めたい。さらに,調査会社にも協力を仰いで,質問票調査の回収率を上げるように努めたい。
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