2019 Fiscal Year Research-status Report
A Longitudinal Research on Clothing Retailing and Grocery Retailing in Japan - A QCA-based Approach -
Project/Area Number |
18K01886
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
東 伸一 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70368554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 斉理 法政大学, 経営学部, 教授 (70461126)
矢澤 憲一 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70406817)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小売業 / 業態 / 衣料品専門店チェーン / 食品スーパー / QCA (質的比較分析) / 流通 / SPA / 商業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、本研究において用いる主要な研究方法である質的比較分析(QCA : Qualitaiteve Comparative Analysis)について、方法論としての背景と特徴、そしてその歴史的発展過程および多変量解析を使用した社会科学における研究方法との比較などの体系的整理をおこなった。また、本研究領域とその隣接学術分野、さらには社会科学全般におけるQCAを用いた代表的研究成果のレビューを実施した。 近年の社会科学分野においては、Mixed-method あるいは Multi-method Research(MMR) として、定性的研究方法と計量的研究方法をなんらかの形で組み合わせたり、両者による結果を比較対照したりするスタイルの研究がみられるようになっている。この点については本研究課題においても申請段階より計画している事項であり、19年度においてはMixed-methodの方法論的妥当性と制約についての検討もおこなった。 18年度におこなった研究活動および19年度の活動を踏まえ、19年度の主な成果として以下を発表している(一部は今後の発表が決定している)。ひとつは食品小売業の満足度に関するQCAを用いた論文(英語)、もうひとつはMixed-methodによる同テーマについての英語論文である。さらに、ACRA(American Collegiate Retailing Association)年次学会においても同テーマの論文が採択された。20年度に開催されるIMP ASIA 2020(産業財マーケティング分野)に応募した研究では、衣料品専門店チェーンの調達ネットワークを題材にし、過程追跡法(Process-tracing Method)を用いた研究成果を報告することが決定している。過程追跡法は本研究課題においてQCAとの組み合わせを検討している研究方法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】に示した通り、2019年度においては本研究課題のひとつの特徴である研究方法としての質的比較分析(QCA: Qualitative Comparative Analysis)および過程追跡法(Process-Tracing)、さらにはこれらの方法論と多変量解析を基礎とした社会科学分野の代表的研究方法との組み合わせによるMixed-method / Mixed-method Research (MMR)についての基礎的研究を遂行することに重点を置いた。また、それら研究方法を適用し、18年度終わりに収集した食品小売業における消費者サーベイデータをもとに実証をおこない、複数の研究成果の公表につながった。これらは18年度末に設定した課題点を充足する結果となった。 本研究課題で設定している6つの研究フェーズは、【P.1】日本の小売業の長期的構造変化の動態把握と衣料品専門店チェーンおよび食品スーパー業態の地位変動を整理したデータベースの作成 【P.2】フェーズ1で構築したデータベース内の各期間における小売チェーン間の「優劣」を峻別するための結果指標と原因条件の検討 【P.3】データベース内の各分析期間での観察対象となる小売チェーンの事例分析セットの作成 【P.4】QCAによるデータセットの解析と結果の解釈 【P.5】同一データセットのデータの多変量解析による分析の実施とQCAを用いた分析・解釈結果との比較・検討の実施 【P.6】研究成果のまとめ(国内外の学会報告、国内外の学術誌への投稿、学術書の執筆 など)によって構成されている。 2019年度の活動は、上記6フェーズについて方法論や解析、研究成果の報告も含めて全体のフェーズを探索的に実践する形となったといえる。20年度においては、まず各フェーズの未完了作業を完成させ、フルスケールで本研究課題を遂行することとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】および【現在までの進捗状況】に整理したように、研究各フェーズとも概ね計画通りに推移しているが、今後の研究を推進し、研究目的を達成するために以下の事項についての注力をおこなってゆくことを計画している。 (1) [P.1]のデータベースについては概ね完成しているが、QCAによる分析のために不可欠となる原因条件(causal conditions)と結果(outcome)指標について、[P.2]に挙げる複数事例の過程追跡および会計領域の知見を用いた抽出作業に注力する。 (2) 衣料品専門店チェーンについての研究成果の発表は食品スーパーのそれに先駆けて実施する予定としていたが、実績としては計画と順序が逆転している。ただしすでに国際学会への投稿も完了し、過程追跡法の試行にも着手しており、これをQCAによる研究プロセスにおける基礎としてゆく。 (3) 食品スーパーについては、衣料品専門店チェーンと比較すると極めて強い地域市場性に特徴づけられるため、長期時系列の構造的なデータベースだけでなく、小商圏を前提とした小売競争の実態を反映することが可能となるよう、研究方法の改善を図ってゆきたい。 (4) 上記3点における充実を図ったうえで、[P.4]~[P.5]のフェーズを推進し、最終的な成果報告に向けた研究を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の発生は、主に以下の事由による。(1) 2020年3月末に予定していたACRA (American Collegiate Retailing Association)の年次学会での研究報告のための出張が、日本国内および開催地(米国)における新型コロナウイルスの感染拡大により見合わせとなり、渡航関連費の予算が未執行となった。(2) 小商圏における消費者調査の実施を都内商店街にて計画していたが、(1)同様の理由で延期となり経費が未発生となった。(3) 2019年度、研究代表者が国内研究期間を取得したため、データベース構築作業を自身で進めることができ、研究補助者に依頼する作業が発生しなかった。 上記(1)についてはACRAと米国マーケティング協会(AMA)が共催するACRA-AMA Conferenceでの報告を予定している。2019年度末に見合わせた学会出張と同程度の費用が発生する。すでに投稿論文が採択されているIMP ASIA 2020での研究報告の経費も執行する。上記(2)についても調査実施上の安全性が確保できた段階で迅速に実施に移る準備を進めている。上記(3)関連の作業は概ね完了しているが、データ項目の補足作業に関する謝金の発生を見込んでいる。 以上より、2019年度から繰越となる研究費については、すべて2020年度の研究活動において計画的に執行する予定となっている。
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