2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K01912
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
張 櫻馨 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (70404978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 敬 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (50239183)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | のれん / 減損損失 / 規則的償却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3年目(2020年度)に行った研究手法の見直しに合わせて、研究内容に優先順位を付け、調整を行った。当初、定性的情報を中心に検証を行う予定であったが、①定量的情報を実証的に検証することを優先的にし、②その結果をさらに定性的情報の分析結果と突合せて、のれんの減損情報の実態を明らかにしていくことに計画を変更した。検証対象は3年目までに収集したサンプル(IFRSと日本基準を適用する企業)をそのまま使用する。4年目(2021年度)には、①の作業を遂行し、先行研究のサーベイと検証作業を行った。 まず、米国企業とEU企業を対象とする先行研究をそれぞれサーベイした。EU企業が本拠をおく国々の中には、IFRSを適用する以前、日本と同じように規則的償却と減損処理の併用(償却減損併用モデル)を採用している国が存在していたことと、償却減損併用モデルに対する市場の反応を把握することができた。それから、米国企業とEU企業を対象とする先行研究との結果の比較を通じて、規則的償却による情報(のれんの償却費)が有用ではないと結論付けた米国企業を対象とする先行研究の結果の限界を明らかにすることができた。 検証対象としたのは2015年3月期から2019年3月期にかけて日本会計基準を適用し、のれんを計上しているなど本研究が設定したサンプル選択基準を満たす2,341企業・年(JGAAPサンプル・グループ)である。のれんの減損情報と償却情報は、定量と定性の両方を手作業で収集した。定量的情報を使って検証を行った結果は、これまでの日本企業を対象とした検証と異なる結果を得ることができた。検証モデルは、EU企業を対象とする先行研究に踏襲することにし、Barth et al. (2001)に従うことにした。 現在、JGAAPサンプル・グループと同じ手続きに従って、IFRSサンプル・グループを選択し、データを集めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目(2020年度)に予定していた4年目の作業は以下のとおりである。 【5研究実績の概要】にも触れている①定量的情報を実証的に検証することである。具体的には、1.米国・EU・日本における先行研究のサーベイ、2.サンプル企業の選択、3.検証モデルの特定と4.検証に必要な情報(定量と定性の両方)の収集である。予定通り、全工程を完成させることができた。 現在、IFRSサンプル・グループの検証作業に取り組んでいる。検証の工程はJGAAPサンプル・グループと同じである。その結果を2021年度で得た結果と比較できればと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
そもそも本研究は、これまでの研究活動の一環として定期的に海外の学会に出席し、セッションを聞いたり、海外の研究者と交流したりした内容を具現化したものである。研究内容などのフラッシュ・アップのため、当初から定期的な国際交流を研究計画に含めていた。しかし、コロナの影響で約2年間日本からの出・入国ができず、これらの計画は実行できずに今日に至っている。それでも、何とか研究を進めていきたいと考え、とりあえず日本企業を対象とする検証作業を進めることにした。 当初、本研究は2021年度に終了する予定であったが、コロナ禍の影響に鑑みて1年間の延長が認められた。また、2022年度からwith コロナによる規制緩和が行われ、以前より海外との交流が進めやすい環境になりつつある。5年目には、まず4年目の検証内容とそのインプリケーションを論文にまとめることに最初の力点を置いておくこととする。そして、次にIFRSに基づく資産計上後のれんの処理方法に関する最新研究を確認するため、IFRS導入以前に日本基準と同様に償却減損併用モデルを採用していたオーストラリアやヨーロッパの大学や学会を中心に、これまで取りまとめた研究成果をたたき台として、精力的に意見交換を行っていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
本研究の研究テーマであるのれんの減損情報の開示実態は、そもそも日本基準が要求している償却減損併用モデルとIFRSの減損モデルが異なることに起因して生じる課題である。そのため、【8今後の研究の推進方策】にも触れたように、海外研究を常にチェックしたり、海外研究者の視点を取り入れたりする必要がある。もちろん研究計画には最初からこうした海外の要素を含めた。しかし、研究計画はコロナによるパンデミックに狂わされた。その結果、予算を繰り越さざるを得なくなった。 2022年度からようやくコロナ収束の兆しが見え、ヨーロッパ会計学会を皮切りに海外の学会は徐々に本来の姿に戻りつつある。次年度の5年目には、これまで実行できなかった研究計画を遂行し、海外の要素を本研究に取り入れるために、積極的に海外の学会・大学に出向きたいと考えている。
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