2018 Fiscal Year Research-status Report
Reform in Public Governance and Accoutability: Japanese cases
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18K01914
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
森 勇治 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (90295569)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自治体病院 / NPM改革 / ガバナンス / アカウンタビリティ / 医療経営 / クリティカルアカウンティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はNPM(新公共経営)改革として世界各国で取り組まれてきた自治体活動におけるガバナンスとアカウンタビリティ改革が、日本においてはどのように行なわれてきたのかを明らかにする。単純に記述するだけではなく、社会的構築物としてガバナンスとアカウンタビリティを見つめ、社会学等の知見を利用した理論によって、その存在を説明する。本研究は「クリティカルアカウンティング」に分類できる。本研究に成果をトップジャーナルに掲載することを最大の目的とする。 周知のように、日本の多くの研究では自治体や公的機関に対してより一層のNPM改革の推進が期待されてきたが、本研究ではNPM改革が徹底していないのにも関わらず、日本の自治体等の公的機関では一定水準以上のサービスを提供している状況を理解することに焦点を当てる。 自治体首長、議員、病院長、自治体職員、病院職員、医師、看護師、市民グループ等への広範なインタビューと公開・非公開資料の分析を行うことで、当該自治体病院の抱えるガバナンスとアカウンタビリティの問題点を指摘することができた。 当該ケースを含め、日本の自治体病院の多くは院長をはじめとした医師を大学の「医局」の派遣に依存している。そして病院のトップは専門経営者ではなく医師である。そのため医療サービスの提供への関心は高いがそのための管理会計数値等についての関心はそれほど高くない。また医局と病院のパワーバランスについても個別病院で異なる。そして組織トップの選任が重要事項であるはずのガバナンスに市民が参加できておらず、また首長の関与も限界がみられる。市民へのアカウンタビリティも不十分である。 上記のような発見事実が、日本独自の状況であることを会計学、公衆衛生学、行政学、社会学等の広範な文献研究より明らかにし、それを説明するための理論を中根(1967)や阿部(1995)らの日本の社会文化論から発展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3か年の研究の展開順序については前後しているが、自治体病院についてはケーススタディを実施し、国際学会での報告にとどまらず、高レベルの国際学術誌への投稿を行ったことから、初年度として一定以上の成果を上げることができたと考える。 今年の研究成果はスウェーデン・ルンド大学で開催されたEuropean Institute for Advanced Studies in Management(EIASM)のPublic Sector Conference、東京・早稲田大学で開催されたAsia Pacific Management Accounting Association (APMAA)、韓国・ソウル大学で開催されたComparative Asia Africa Governmental Accounting(CAAGA) Conferenceでの報告を行い、順調に研究を発展させることができた。EIASMではChairのLapsley教授、病院管理会計で著名なAngele-Helgand教授他から好意的なコメントを頂戴し、EAA(2019年5月)では一定の評価を受けた結果PS(Parallel Sessions)での報告を予定している。そして某トップジャーナルへの投稿を行い、第一回目の査読への対応では、三名の査読者から指摘された広範な論点のすべてのクリアをできたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の自治体病院研究については、第一回目の査読には十分対応できたので、第二回目の査読を待つが、それに対応するために、追加調査が必要となる可能性もある。2019年度内の掲載許可を期待する。3か年の期間中にトップジャーナルへの掲載が許可されれば、本研究の最大の目的は達成できたと考えられる。 参加型予算についてはいくつかの自治体へのパイロット調査を実施したが、現実には予算への取り組みが不十分であることが明らかとなった。この発見事実からUddin, Mori, Adhikari (in print)と同様の成果となることが分かったので、研究の方向を変更する必要がある。現在取り組む準備をしているテーマについては、少子高齢化、環境・エネルギー問題、交通問題等の多種多様な都市問題をICTによって解決しようとする「スマートシティ」政策を想定している。日本においてもいくつかの自治体が、日本を代表する企業と連携し大きな成果を上げているようだが、そこでのアカウンタビリティやガバナンスについてはほとんど研究がされていないようだ。本年度中に本格的調査を実施し、まずは国際学会での報告まで到達したいと考える。
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