2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Effect of Artificial Intelligence on Management Accounting
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18K01921
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
谷守 正行 専修大学, 商学部, 教授 (90733824)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | AI(人工知能) / 管理会計 / 意思決定会計 / 行動経済学 / 定性評価分析 / 定量評価分析 / 機械学習 / システム1 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究実績は,以下の2点である。まず,管理会計の意思決定会計とAIとの関係を整理し,以下の3点の指摘を行った。第1に,問題の認識ではAIの「特徴抽出機能」が有効であることである。第2に,定量評価分析では,主にアルゴリズムの問題が主であり,AIの適用効果は低いことである。そして第3に,定性評価分析では,AIの「分類と将来予測機能」が有効に機能することである。 さらに,定性評価分析では行動経済学の理論と組み合わせることで,AIによる定性評価分析がより機動的になるとの仮説を立てた。たとえば,直感,感覚,経験,熱意などによる迅速で体力をほとんど消耗しない行動経済学理論「システム1」が,AIを適用することによりコンピュータ上で実現できる。 ただし,AIの機械学習によって行動経済学のシステム1が学習される場合,その反対に弊害も起こりかねないことを指摘した。それは,人間の勘違いや思い込みがそのままAIに学習されてしまい,そのAIは人間と同じように偏った判断をしてしまいかねない。すなわち,思い込みや勘違いをしてしまう人間的な(人間に近い)AIになる可能性がある。 そのため,瞬時の人間の直感力を持った沈着冷静な計測判断機能をもったAIにするには,システム1(定性評価)とシステム2(定量評価)の順番や並行的関係性,フィードバックやフィードフォワードの機能,多段階判断など意思決定プロセスとその組合せを実証的に検討する必要があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の仮説検証のため,Python等によるAIプログラム開発を進めているものの,まだ十分に検証実験可能な状況にない。その理由は3つある。 1つは,当初予想していなかったプログラム処理上の制約や不具合が発生し,その都度予定以上に対応に時間を要したことにある。 2つ目は,意思決定のための定性・定量のデータを大量に必要とするが,その取得に遅れが発生していることにある。今後,検証可能な代替データの取得も検討する必要がある。 さらに,3つ目の理由として,年初より予定していた海外の学会参加や事例調査の全てが,今般の新型コロナウィルスによる海外渡航制限のため不可能となり,本研究の情報収集の進捗に大きく影響している。制限解除になったとしても,個別にどの程度取得可能になるかを見極めながら情報収集を行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,開発中のAIプログラムシステムによって,管理会計とAIの関係性を具体的に検証していく。そのための研究上の推進方策として,実務と同レベルのシステム開発工程に基づき,より厳密に進捗管理する必要がある。また,大量の定性・定量のデータの取得に関する方策としては次の通り2つある。 1つは,オープンなデータの利用を検討する。公的機関や流通関係で共同に構築するデータべースから本研究に利用可能なデータを抽出する。 2つ目は,一般のアンケート情報などを利用してあまねく広く回答情報を収集する方法が本研究に適用できないかを検討する。 さらに,海外の研究理論や先行事例等の収集については,制限解除後に可能な限り推進していく。本研究はとくに文献だけで研究するのでは限界がある。海外の大学の研究や大企業等での実践例を十分に参考に研究する必要がある。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会参加や海外企業の視察が,新型コロナウィルスによる渡航制限により不可能となったためである。次年度以降,制限解除度合に応じて安全に推進していく予定である。
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