2018 Fiscal Year Research-status Report
The effects of relationship among business group companies on financial statements errors
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18K01922
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
金 鉉玉 東京経済大学, 経営学部, 教授 (40547270)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベンフォードの法則 / 財務諸表エラー / 関係会社取引 / 会計ビッグバン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ベンフォードの法則(Benford’s law)を用いて日本企業の財務諸表エラーを測定し、そのエラーにどのような要因が影響を与えるかを分析することである。本年度は、1983年度から2015年度までの長期サンプルを用いて、上場企業の利益の切り上げ行動と財務諸表エラーに影響を与える要因を分析した。 分析の結果、日本企業の利益の切り上げ行動が観察されたが、その傾向は連結利益よりは単体利益、赤字企業よりは黒字企業において顕著であった。また、会計ビッグバン後の期間において利益の切り上げ行動が低下した可能性があるが、その傾向は単体利益において顕著であることもわかった。続いて、分析サンプルの94.5%程度がベンフォードの法則に従った財務諸表を作っていることがわかった。これは、5.5%の企業においては財務諸表エラーが観察されることを意味する。そして、この財務諸表エラーに影響を与える要因は次の通りであった。子会社数が多く、海外子会社が存在するほど連結財務諸表のエラーが大きかったが、非支配株主持分が多いほど連結財務諸表のエラーは小さかった。一方で、内部取引が多いほど単体財務諸表のエラーが大きかった。併せて利益調整を行なっている企業ほど、そして損失を出している企業ほど財務諸表のエラーが大きいこともわかった。最後に、会計ビッグバン後に連結損益計算書のエラーが増加した可能性も示された。 これらの結果は、利益調整が財務諸表エラーを増やし、会計ビッグバンによりその利益調整が単体利益から連結利益に移った可能性を示す。また、グループ構造が財務諸表エラーに影響を与えることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はベンフォードの法則を用いて日本企業の財務諸表エラーを測定した。そして、2つの論文を執筆し、ベンフォードの法則の活用可能性と課題について認識することができた。したがって、当初予定した計画通り研究が進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の分析から、企業のグループ構造が財務諸表エラーに影響を与える可能性がわかった。今後は、グループ企業間の取引などのグループ構造に注目する。グループ企業の構造やグループ企業間の取引内容の詳細を勘案しながら、どのような取引やグループ構造が財務諸表エラーを高めるか(あるいは低めるか)を分析していきたい。
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Causes of Carryover |
グループ構造に関するデータ収集作業に時間がかかっているため、次年度使用額が生じている。この金額はデータ収集作業に費やす予定である。
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