2018 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of R&D Investments in a Context of Open Innovation
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18K01928
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
北尾 信夫 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (00708969)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 管理会計 / オープンイノベーション / 研究開発 / ケーススタディ / 導入研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
オープンイノベーションの様々な局面で行われる意思決定の質を、財務情報の効果的な活用によって高めることを目的に研究を進めている。今年度は、当面の研究対象である地域のオープンイノベーションを促進するためのコンソーシアムにおいて延べ約20時間にわたる参与観察・インタビューを行い、経験的証拠の収集を実施した。特に、平成31年2月と3月の2回に渡り、7つの組織の参加を得て実施した財務情報を用いた研究開発投資評価に関する意見交換会では、実務現場の意思決定の実態を明らかにする貴重な情報が得られるとともに、研究対象との信頼関係(ラポール)を深めることができた。 併せて、次年度以降、順次展開していく予定の、コンソーシアムに参加している組織別の複数ケーススタディの準備を進めた。まず、オープンイノベーションの導入に伴う組織の課題を分析するための理論的枠組みの開発に取り組んだ。管理会計の領域を中心に、組織における技法・システムの変化を扱った先行研究を調査し、オープンイノベーション白書が指摘する問題や、これまでの調査結果を総合して、従来の導入研究などで見られる目的論的・規範的アプローチの欠点を明らかにし、進化論的アプローチを用いたモデルの導入を進めた。 さらに、本研究の予備調査として行った質問票調査や、今年度新たに収集した情報から、個別のケーススタディで明らかにすべき問いを明確にし、その答えを得るために必要な分析単位を定めて関係者にインフォームドコンセントを行い、研究協力依頼の範囲を拡げた。個々の組織に調査協力を打診し、面接すべき人物、接触可能な情報源を特定する作業を進め、ケースプロトコル(手順)の作成に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、オープンイノベーションにおける様々な局面での意思決定の質を高めたいという研究対象のニーズに合致し、極めて協力的に研究を進めることができている。コンソーシアムでは多くの参与観察の機会を与えられており、オープンイノベーションに取り組む個々の組織との関係も良好に築け、経験的証拠の収集も順調に進んだ。しかし、研究関心の中心はコンソーシアムそのものよりもコンソーシアムに参加する組織にあり、それらの組織の研究のための分析視角を得ることが今年度の大きな課題であったが、今年度の設備投資でツール、ソフトウエアが揃ったことで理論開発が進み、一定の目処がたったことで次年度への展望が開けた。最初のケーススタディの実施は次年度以降にずれ込んだが、代わりに、コンソーシアムでの情報・証拠の収集が充実し、個々の進捗を総合すると計画全体としては、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、研究目的にそって分析単位をオープンイノベーション・コンソーシアムから個々の参加組織に落としていく。引き続き、コンソーシアムが研究の足場であることに変わりはないので、コンソーシアムの年間活動計画に本研究にかかわる事項を盛り込んでもらえるよう理解を得てゆく。同時に、慎重に個々のコンソーシアム参加組織との信頼関係を築き、ケーススタディへの協力を要請を行い、研究対象にあわせたケースの分析手順を準備する。以降、ケーススタディを進めていく過程で、今年度、開発した理論にフィードバックをかけてゆくとともに、執筆したケースを研究対象の協力者にレビューを受けて、研究成果の妥当性を高める予定である。論文等でのアカデミズムへの貢献に加えて、実務家へのセミナー等においても得られた知見を報告してゆく。
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Causes of Carryover |
期末に行った研究調査のための旅費の精算処理が次年度にずれ込んだためのもので、次年度早々に処理される見込み。
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