2018 Fiscal Year Research-status Report
The Theoretical and Empirical Research of the Effects of Integrated Reporting on Management for Corporate Value Creation
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18K01931
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
内山 哲彦 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (50334165)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 会計学 / 管理会計 / 統合報告 / 経営管理 / 企業価値創造 / インタンジブルズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様なステークホルダーの存在を前提に、企業価値創造に向けた統合報告による経営管理への効果に関する実態把握と理論的考察を目的とする。 2018年度は、経済的な企業価値とCSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)における企業価値との関係性について明らかにし、そこでの統合報告の役割を明らかにするべく、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に着目した。今日の経済基盤では、経営活動の成果として経済価値と社会価値・組織価値によって成り立つ企業価値の創造が強く求められ、社会価値・組織価値の創造は経済価値の創造に深くかかわるとする認識が、企業においても投資家においても強調され、世界的に一般的になっている。本研究でもそのような経済基盤を前提としている。SDGsは企業経営にとっても意義・重要性を有しており、またSDGsの達成において企業に期待される役割(創造性、イノベーション)が強調される。そこで、SDGsの達成に貢献するためのSDGsを巡るマネジメントについて考察し、SDGsへの取り組みとそのマネジメントはインタンジブルズ(無形の資産)のマネジメントに繋がることを指摘するとともに、これまでの経済価値の創造を中心としてきた既存のマネジメント・プロセスをベースに、SDGsマネジメントのフレームワーク(体系・全体像)を明らかにした。さらに、日本企業における経営実務をベースに考察を行い、SDGsマネジメントのフレームワークにおける統合報告の位置づけ・役割を明らかにした。 上記研究の一環として、統合報告の取り組みにおいて先進的な企業2社に対してインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、統合報告書が主たる報告先とする投資家が求めるものと企業内部の経営管理における目標との統合、多様なステークホルダーに対するさまざまな企業価値の統合、統合思考による組織内部での目標の統合、これらに対する統合報告の役割について実態把握とモデル化を行う。 2018年度は、経済的な企業価値とCSRやESGにおける企業価値との関係性について、SDGsに着目して考察を行い、SDGsマネジメントのフレームワークを明らかにした。具体的には、企業観・企業価値観を表す企業理念およびコーポレート・ガバナンス、CSR、多様なステークホルダーとのコミュニケーションと「ダブル・ループ」、マテリアリティ評価と統合報告、企業理念から業績評価・報酬制度までの一貫性、これらを基盤とし、企業理念、財務・非財務目標を含む長期ビジョン、中期経営計画(戦略)、KPI、事業計画・年次計画・予算と業績評価・報酬制度、これらが一貫性を持ったフレームワークを明らかにするとともに、そこでの統合報告の位置づけ・役割を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、経済的な企業価値とCSRやESGにおける企業価値との関係性について、SDGsに着目して考察を行い、SDGsマネジメントのフレームワークを明らかにするとともに、そこでの統合報告の位置づけ・役割を明らかにした。 2019年度以降は、投資家の求める主として経済的価値の指標と経営管理において用いられる業績指標との関係性を明らかにし、統合報告において両指標がどのように用いられているかを、統合報告書のレビューやインタビュー調査等により明らかにする。また、CSRやESGにおける企業価値のうち、SDGsでは取り上げきれなかったコーポレート・ガバナンスにかかわる領域についてさらなる検討を加え、経済的価値とCSRやESGにおける企業価値とをあわせた持続可能な企業価値創造における統合報告の役割・意義について考察を行い、知見の体系化を図る予定である。 あわせて、統合報告の取り組みにおいて先進的な企業に対するインタビュー調査を継続する。2018年度は2社に対して調査を実施することができたが、新たな調査サイトの開拓を含め、引き続き調査を進める予定である。
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Research Products
(3 results)