2019 Fiscal Year Research-status Report
監査担当パートナーにおける監査の品質の違いが利益調整に及ぼす影響に関する実証研究
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18K01933
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
笠井 直樹 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (80584143)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 監査の品質 / 監査担当パートナー / 監査人の業種特化 / 監査人の作業負担 / 監査報酬 / 監査チーム / 会計不正 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度における具体的な研究テーマとして,主に個々の監査担当パートナーの特性のうち業種特化(特定業種における専門的知識および業務経験を代理する指標)・業務負担の程度・監査チームの特性等を取り上げ,こうした監査人・監査チームの特性と利益の品質を代理する指標との関係について検証を行った。 しかしながら,財務データおよび監査人関連データ等の公表データを用いて監査の品質・利益の品質を測定するためには一定の仮定をおかなければならず,予め設定している仮定の妥当性についても検討を行う必要がある。例えば,業種特化に関する指標一つをとってみても,個々の監査担当パートナー固有の業界知識・業務経験に関するデータが直接的に開示されているわけではなく,マーケット・シェアや経験年数等のデータから間接的に把握することしかできない。当該特性を代理する指標は現在のところ複数存在しており,様々な指標の妥当性を検証する作業も同時に行っている。本研究では,これまでの先行研究で提案されてきた既存の指標を用いるだけでなく独自の指標も提案する等,各指標の妥当性の検証を多角的に行っており,既存研究とは異なる新たな知見も得ることができた。また,業種特化以外の他の指標についても複数の指標を設定し,個々の指標間の関係性も併せて検証を行っており,その妥当性について多角的に検証しているところである。 また,監査の品質が低かったことが事後的に判明する最たるケースである会計不正に関する分析も実施しており,会計不正関連のデータ・ベースの構築作業を進めるとともに,パイロット・テストも実施している。監査担当パートナー・監査チームの特性と会計不正との関係については国際的にも検証が進んでおらず,新たな知見を得ることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,本年度は昨年度に引き続き分析に用いるデータ・ベースの作成・更新を行い,当該データ・ベースを利用してデータ解析を進めた。また,分析の過程で得られた結果の一部および関連する論点について論文に取りまとめ,国内外における学会報告および論文発表等を通じて研究成果の公表を適宜行っている。 分析に使用している指標の多くは個々の監査担当パートナー・監査チームに関するデータをベースに加工したものであり,さらに,元データが市販のデータ・ベースに収録されていないものもあるため元データを手作業で収集する等,データ・ベースの構築にはかなりの時間を費やしている。 本年度中に分析に利用するデータ・ベース構築作業の大半を終えており,現在本格的にデータ解析を進めていることから,当初の計画通り順調に研究成果をあげることができている。 データ解析と併せて,会計不正・監査の失敗関連の実態を把握するため,個々のケースについても分析を行っており,当該ケース研究についても論文に取りまとめているところである。データ解析だけでは把握できない監査の失敗に至る監査人の判断に係る論点を分析することで,データ解析を実施する際の仮説設定・変数選択等に役立てることができている。当初の計画と併せて,会計不正関連の論点も追加で分析することで相乗効果があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築したデータ・ベースを用いデータ解析を引き続き進めていくとともに,次年度は本研究プロジェクトの最終年度であるため積極的に研究成果の公表を行う予定である。 現在,新型コロナウィルスの感染拡大防止のため国内外の学会・研究会等が相次いで延期されている状況ではあるが,適宜web conferenceに移行されており,むしろ移動を伴わないことで物理的・時間的制約がなくなり,より多くの学会・研究会等に参加することが可能となっている。こうした状況を利用して国内外の研究者と積極的に研究交流を行い,本研究を推進するために活用する予定である。研究交流を通じて最新の研究動向をキャッチ・アップするとともに,分析手法の精緻化を進めるための機会を確保する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため研究報告を予定していた国際学会が急遽オンライン開催に変更され,学会開催会場までの交通費・宿泊費等が不要になったため次年度使用額が生じた。次年度は夏以降学会・研究会等について順次対面で開催されるものも出てくる可能性が高いことから,主に旅費等に執行する予定であり,この他にも英文校正およびデータ・ベースの購入等に充てる予定である。
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