2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01939
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
福井 義高 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (40322987)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 財務会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の核心をなす「問い」、それは利益とは何か、如何に測定すべきか、であり、具体的な目的は、経済理論に基礎づけられた、新たな操作性ある利益概念を構築することである。現実に測定可能な操作性ある利益概念を構築するには、『価値と資本』においてジョン・ヒックスが所得の中心的意味の近似とした「所得No. 2」を直接観察することができないゆえ、さらなる理論的近似を行わなければならない。にもかかわらず、半世紀以上前にシドニー・アレキサンダーが《variable income》概念を提唱して以来、会計研究において、利益概念に関する新たな発展はほとんどみられない。日本の会計実務では、2006年に公表された概念フレームワークに基づき、利益認識のあり方がリスクからの解放という考え方で明確化されたものの、利益概念の操作性を念頭に置いた理論的精緻化には、多くの課題が残っている。 昨年度に引き続き、理論的・実証的根拠のある利益概念再構築に向けた斎藤静樹東京大学名誉教授との共同研究に基づいて、動学的最適化に基づく資産価格理論と整合性を持った、のれん概念とそれに対応した会計認識・測定の在り方に関して考察を進めた。具体的には、のれんの存在を市場均衡からの乖離がもたらす経営者による裁定行動の結果ととらえたうえで、その一時的性格ゆえ、のれん償却が必要となることを明らかにすることができた。市場均衡からの乖離は、アントレプレナーとしての経営者の現状認識の相違から生じるととらえることで、会計研究における認識論的考察の重要性を再確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中心となる研究課題の考察が進展するとともに、いくつかの研究成果を発表することができた。具体的には、以下のとおり。 のれんに関する、斎藤静樹教授との共同研究が、2020年度中にまとまる目途がついた。 さらに、定例的に行っている二つの若手会計学者との研究会で活発な意見交換を行うとともに、会計専門誌(月刊)に10編の論文を発表した。 なお、コロナウイルス発生のため直前に中止となったものの、第1回「『企業会計』カンファレンス」の開催準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
多期間動学的最適化に基づく現代ファイナンス理論の観点に立てば、投資主体の目的は、多期間フロー流列の最適化であって、一時点でのストック価値最大化ではない。今後は、これまでの成果をさらに発展させ、こうした観点と整合的な利益概念の構築を進める。研究を進めるうえで必要な文献収集及び整理を行うとともに、事情が許す限り、欧米の学会や大学等研究機関でのワークショップ等に参加し、意見交換と情報収集を継続する。また、斎藤静樹教授との共同研究を進めるとともに、定例的に行っている二つの研究会を今後も継続・発展させる。
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Causes of Carryover |
(理由) 英語論文作成が間に合わなかったため国外で研究成果発表を行わず、国内で予定していた発表がコロナウィルス感染拡大で延期になったため。 (使用計画) 国内外での研究成果発表を積極的に行い、旅費・学会参加費に使用する予定。
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