2020 Fiscal Year Research-status Report
創造性と連携を促進する原価企画システムに関する研究
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18K01945
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
諸藤 裕美 立教大学, 経済学部, 教授 (20335574)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原価企画 / サービタイゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の原価企画研究は、製品を対象とするものが主であった。2000年代後半よりサービスを対象とする研究がなされるようになったが、製造業のサービス化(サービタイゼーション)のための原価企画を扱った研究は極めて少ない。一方で、サービタイゼーションにおいては多様な連携が必要である。それゆえ、サービタイゼーション下の原価企画に関して、創造性と連携をいかに作り込み促進するかという視点で研究を行った。まず、実務の取り組みを把握するため、サービタイゼーションを実践している企業1社へのインタビューを行った。次に、管理会計学、経営学、オペレーションズ・マネジメント、マーケティング等の領域のサービタイゼーションに関する文献研究を行った。 その結果、以下の点が明らかとなった。第一に、製品販売のビジネスモデルに比して、顧客との連携がより重要となる。顧客ニーズの内容・範囲や支払意思を把握し、プロセスを作りこみ、価格やコストを見積もる必要がある。顧客との接点となる拠点の設置にかかわる会計上の問題も存在する。顧客の使用状況把握におけるIoTの重要性もしばしば論じられている。 第二に、組織内連携が重要である。顧客企業のビジネスプロセスに適した製品とサービスを提供し、顧客の価値を最大化させる一方で、効率性も追求するためには、フロントエンド組織、バックエンド組織ならびに戦略センターを設置することが重要である。 第三に、組織間関係が重要である。顧客に提供する製品・サービスにつき、サプライヤーにどれだけ依存するか、また、サプライヤーとの連携プロセスについて確認した。 なお、製品・サービスの価値の作り込みにかかわって、昨年度末にサステナビリティ経営を行っている企業へのインタビュー調査を行い、今年度に入り、環境やサステナビリティにかかわる価値の作り込み・評価に関する文献レビューも行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サービタイゼーションが進んでいる企業やサステナビリティ対応をしている企業にインタビュー調査を行う予定であったが、コロナ禍ゆえほぼ実行できなかった。 サービタイゼーションに関して、管理会計学領域の研究が極めて少なく、得られる知見が限られていたことから、他領域の文献研究も行った。その際、原価企画に間接的にかかわる研究群を抽出する作業に、特に最初の段階で時間を要した。 一方で、更に理論的に研究を深めたいと考えていたマス・カスタマイゼーションがサービタイゼーションでも見られることがわかり、上記の研究以外に、その点についての研究は進められることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に続き、サービタイゼーションとサステナビリティの原価企画について、「創造性と連携の促進」という観点から研究を行う。 サービタイゼーションのもとでの原価企画につき、引き続き複数領域の文献レビューを行い、秋に学会報告、その後論文執筆を行う。その後、上場製造業を対象とした質問票調査に関し、顧客・組織内・組織間連携の観点から分析を行う。 サービタイゼーションに関する研究の中に、環境配慮を考慮に入れたPSSという研究群が存在する。また、管理会計学領域の研究において、サステナビリティ配慮の研究群やそれ以外においてもサステナビリティ配慮の考えを組み込んでシステム設計する研究が存在する。それら研究に基づき、サービタイゼーションとサステナビリティのための原価企画のあるべき姿を考察する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、予定していたインタビュー調査を実施できなかったため、残額が生じた。 2021年度は、インタビュー調査と質問票調査のため多額の支出が必要となる。
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