2018 Fiscal Year Research-status Report
保守主義とキャリアコンサーンのモデル分析 -労働慣行と企業会計の関係について-
Project/Area Number |
18K01951
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西谷 順平 立命館大学, 経営学部, 教授 (40363717)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保守主義 / キャリア・コンサーン / 分析的会計研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、キャリア・コンサーンが会計基準設定、とりわけ会計的保守主義の最適レベルに与える影響について、多期間モデルを使った分析的研究によって明らかにすることであった。そして、そこで核心をなす学術的な問いは「労働慣行などの外部条件のために、報酬契約の設計において硬直性がある場合には、報酬契約の指標となる会計情報にバイアスを加えることで最適報酬契約の設計が行われるのではないか?」というものであった。これに対して、初年度に当たる2018年度では、キャリア・コンサーンのモデルの精査と、保守主義のモデルの精査を同時並行で進めた。後者については、西谷順平『保守主義のジレンマ』第4章で自ら提案した保守主義モデルを再検討したため、改めてアウトプットすることはなかったが、前者については、単著論文「キャリア・コンサーンと報酬契約 : Gibbons and Murphy(1992)の解題」『立命館経営学』第57巻5号pp.1-21として発表しておいた。この単著文では、本研究のモデルに組み込むキャリア・コンサーンのモデル候補であるGibbons and Murphy(1992)のモデルのすべての証明を追った。この執筆を通して、一つの統合モデルの中にどのようにキャリアコンサーンと保守主義を組み込むのかについて検討した。その結果、キャリア・コンサーンの報酬関数における成果係数と、保守主義モデルの保守性係数の「代替性」に注目してみることが有効ではないかという着想を得た。しかし、そのためには西谷(2016)で提案された複雑な保守主義のモデルよりは、まず単純なモデルで試行錯誤する方が良いのではないかと思えたため、今後、当初の順番にこだわらず進めてみようと思うに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請調書では、一年目に西谷(2016)で提案された会計情報システムの特性を見極める作業に充てたいとしていた。しかし、上記「研究実績の概要」で述べた通り、その見極め作業による研究公表はまだできておらず、同時並行で進めていたキャリア・コンサーンのモデルについての研究公表を先に行った。これは、今年度の研究成果でもあるが、複雑な会計情報システムをいきなり入れるよりも、単純な会計情報システムとキャリア・コンサーンモデルをまず統合して結果を見た方が良いのではないかと思えたため、当初の予定を変更しながら行ったことによるものでもある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、あるひとつの会計情報システムを前提にして、それと相性の良いキャリア・コンサーンモデルを選ぶのが二年目の作業であった。しかし、今年度の作業結果から、むしろ、あるひとつのキャリア・コンサーンモデルを前提にして、単純な会計情報システムを組み込む方が良いのではないかと思うようになった。よって、今年度は、当初の予定であった1)西谷(2016)で提案された会計情報システムの特性を見極める作業を継続しつつも、2)キャリア・コンサーンモデルに単純な会計情報システムを組み込む作業をメインにしようと思っている。
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Causes of Carryover |
申請した金額と実際に割り当てられた金額が異なるため、大学が与えられる個人研究費と科研費でやりくりした結果として差額が生じている。また、2018年度に発生した大阪府北部地震のほぼ震源地にキャンパス=研究室が位置していたため、パソコンやモニターなど備品が壊れたため更新したり、予定していた出張をいくつか取りやめた。
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