2022 Fiscal Year Research-status Report
アフリカ農民による生計手段選択の社会的決定要因-タンザニアの零細鉱業に着目して
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18K01957
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
藍澤 淑雄 拓殖大学, 国際学部, 教授 (20722317)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカ / 生計手段 / 社会的決定要因 / 零細鉱業 / 採鉱資源の希少性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアフリカ農民が零細鉱業に従事する社会的決定要因を明らかにすることを目的としている。2022年度は、零細鉱業者による採鉱資源の選択に着目しながら研究を進めた。採鉱資源の選択によっては生計を不安定にする可能性があり、零細鉱業者にとってその選択が極めて重要になると思われる。希少性の高い、例えば金鉱石の採鉱労働者は、物理的リスクと生計リスクを負いながら採鉱活動を続けている。ひと山あてたときのリターンの大きさに期待しながら、リスクを負いながらも採鉱活動を行なっているものと思われる。しかしそれだけのモティベーションで採鉱活動を続けられるかという疑問は残る。金鉱石を掘り当てなければ、その期間の分だけ機会費用が生じ生計リスクが高まることから、破綻の方向に向かうことは容易に想像できる。また、逆に希少性が低い資源の場合はリターンが小さく、あえて物理的、財政的リスクを負ってまで、採鉱活動にかかわろうとは思わない可能性がある。しかし希少性の低い、例えば工業鉱物の採鉱活動を続けている零細鉱業者は数多くいる。そこではリスクとリターンを天秤にかけながら採鉱に従事するかを判断する必要性が生じているものと思われる。そこで、2022年度からは、希少性の高い金の採鉱と希少性の低い工業鉱物に着目することにより、その選択に至った社会的要因を明らかにすることに研究の重点を置いている。この視点からの成果とりまとめが現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はフィールドでの社会調査を重視しており、研究の付加価値をその結果と分析に求めている部分が大きい。したがって過去3年の新型コロナ拡大は調査の遂行を阻み、大きな痛手となったきた。2021年度と同様に、2022年度についても、所属機関では海外における研究が推奨される状況ではなかったことと、タンザニアの研究フィールド滞在における安全性確保が不透明であったことから、現地調査を延期せざるを得なかった。したがってこれまで現地に向かわなくてもできる作業を行ってきた。スピード感は鈍っているものの、成果を出す方向で分析や取りまとめは進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度においてもタンザニアのフィールド滞在における安全性について考慮・判断しつつ、研究を続行する。過年度までは主にタンザニア北部のビクトリア湖南部(ゲイタ州)を事例として分析を行っていたが、今年度からは同国中央部(モロゴロ州)を対象とすることとした。北部は金鉱石の採鉱ポテンシャルが高い地域であったが、採鉱資源の選択という視点からは、金鉱石以外を選択する零細鉱業者がほとんどいなかった。このため分析対象としては妥当ではないと判断した。中央部では、零細鉱業者が希少性の高い金の採鉱と希少性の低い工業鉱物の採鉱を行っている。それらに着目することにより、その選択に至った社会的要因について明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス拡大の影響で、研究対象としているタンザニアのフィールドでの社会調査の実施を過年度に実現できなかったため、そのために確保していた資金が残っている。今年度はタンザニアのフィールド滞在における安全性を十分に考慮しつつ、社会調査の実施を予定している。
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