2019 Fiscal Year Research-status Report
本人中心アプローチの認知症ケアのあり方の探索的研究
Project/Area Number |
18K01958
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
出口 泰靖 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70320926)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 社会学 / 福祉社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、認知症ケアをめぐる潮流は、認知症当事者本人の意思を尊重し、本人の意思に配慮したケアを行っていく「パーソンセンタードケア」として新たな動きをみせている。しかしながら、この本人中心アプローチである「パーソンセンタードケア」では、本人がさまざまに困難な状況や事態に立たされるであろう三つの局面について未だ十分には検討されていない。そこで本研究では、本人における困難な三つの局面について検討している。その三つとは、①認知症の進行をめぐる本人自身による「受容」、②本人が意思を表出することの困難、③本人の意に添う形での看取り、である。この三つの困難な局面について、本人はじめその家族や介護職に聞き取り調査を行うことで、人生最期までの生活を本人の意に沿うケア実践とはどういうものであるのか、検討していく。2019年度では、昨今の日本社会において、「予防」が重視されている「認知症」をめぐる動きに着目して論考した。二〇一九年の五月、政府は、「認知症」対策の新大綱を出そうとした。その素案には、「七十代の発症を十年間で一歳遅らせる」と、「七十代の認知症の人の割合を約一割減少させることができ」、「六年間で六%の低下を目指す」と明記するなど、予防に「数値目標値」までかかげようとしていた。 しかしながら、「認知症になった人は予防の努力がたりなかった」という新たな偏見を生み出しかねない、と「認知症」当事者からの批判が噴出したため、新たに出された大綱では「参考値」に格下げした。本研究では、〝予(あらかじ)め、ふせぐ〟ことばかりに躍起になり、「数値目標」という、「めざすこと」ばかりに血道をあげ、ハデに喧伝され、とりとめもないような日々の暮らしのなかでつつましやかに「すごすこと」の有り難さやかけがえのなさは、みすごされ、ないがしろにされがちになってはいないか、論考を重ねた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的にそったデータの整理、文献の検討をおこなっているので、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もさらに、本人中心アプローチの困難な状況について整理をおこなう。
|
Causes of Carryover |
関連する文献の購入やフィールドワークのデータの収集のため使用する。
|