2019 Fiscal Year Research-status Report
越境的労働市場の政策的拡大と社会的ジレンマ―日越比3カ国を事例とした比較構造分析
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18K01970
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
毛利 さとみ (惠羅さとみ) 成蹊大学, アジア太平洋研究センター, 主任研究員 (10535165)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移民政策 / 改正入管法 / ベトナム / フィリピン / 技能実習 / 建設業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本・ベトナム・フィリピンの3国における、非熟練・半熟練労働者の移動に焦点を当て、国家政策の管理強化の下にグローバルな労働市場がいかに制度的に構築されつつあるかを多様な主体の動機・戦略から実証的に解明するものである。研究目的は、第一に、国家間連携の政策形成に影響を与えている原理原則および行政組織的な特徴を解明すること、第二に、越境的な中間組織・仲介者の役割・機能を分析すること、第三に、移動する若者や家族をめぐる就労・生活・意識・支援のあり方について考察することである。 平成31年度は、日本の改正入管法の施行を受けて、新たな在留資格をめぐる受け入れ制度の形成プロセスについての調査研究を中心に実施した。実施内容は以下の通りである。 第一に、建設分野に焦点を当て、省庁および業界が主導する制度構築のあり方についての最新資料の収集・分析に努めると同時に、産業構造の変容あるいは技能概念の再検討などの特定の受け入れ社会・分野に固有の受け入れ文脈の解明に努めた。 第二に、送り出し側の変容を明らかにするために、ベトナム短期調査を実施した。2020年2月4日~8日に実施した現地調査では、送り出し機関3団体とその訓練校ならびに建設労組を訪問し、聞き取り調査を実施した。 以上の研究結果について、国内学会シンポジウムならびに国際シンポジウムで研究発表を行った。また産業秩序の再編に焦点を当てた論文、技能形成と社会統合に関する論文、新たな制度形成をめぐる課題に焦点を当てた論文3点をそれぞれ国内大学紀要ならびに学会誌に執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では、政策生成論理と制度実践プロセスに関する資料収集・フィールド調査を継続して行うとともに、移動する主体を対象とした聞き取り調査および調査票を用いた調査を実施することとしていた。また分析においては、比較の視点を導入しながら社会関係の変容に焦点を当てることとしていた。またその成果は、国際学会等で英語で発表するとともに、査読論文の執筆・発表に取り組むとしていた。 実施状況については、以下の通りである。①日本国内の受け入れ政策の変容について、特定分野における制度生成の特徴を詳細に分析し、分野別に分断化・構造化された受入れ制度の比較分析の前提となる整理を行った。②送り出し側については、ベトナム調査を実施し、複数の送り出し機関の特徴と変容について把握するとともに若者の技能・キャリア形成についての考察を深めた。③研究成果発表については、2019年11月3日日本労働社会学会第31回大会シンポジウム「移住労働者と労働世界の構造変化」(早稲田大学)ならびに、2019年11月16日国際シンポジウムInternational Symposium International Comparison of Latecomer Nations of Immigration: Experiences of Spanish Social Integration Plan in the early 21st Century and Lessons for Japanese Policies(一橋大学)で口頭発表をした。また、『大原社会問題研究所雑誌』、『アジア太平洋研究』(成蹊大学アジア太平洋研究センター紀要)、ならびに『移民政策研究』に寄稿論文として研究成果を執筆・発表した。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成32年度は、国内外においてフォローアップ調査を実施しながら、東アジア・東南アジア圏における移民労働の拡大という文脈に本研究を位置づけ、日本とベトナム・フィリピンの非熟練/熟練労働者の移動について比較研究の観点から調査研究データの整理・分析を進めることとする。 また3年間の研究成果を論文・著書等にまとめ、出版準備を進める。
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Causes of Carryover |
フィールド調査の支出が予定よりも少なかったこと(改正入管法の施行等を受け夏期に国内調査を優先したこと、冬期に感染症等の外的要因などによりベトナム調査期間を短縮したこと)が理由である。
使用計画としてはフィールド調査費とする予定である。
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