2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01973
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高橋 順子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (90555434)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 沖縄 / チャイナ部隊 / 特定余剰戦争財売却のための米中協定 / 中国国民党 / 日系・沖縄系二世 / スクラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、占領初期の沖縄に駐留していた中華民国国民党軍すなわち「チャイナ部隊」について、なぜいつ頃どのような目的で、沖縄のどのあたりに駐留し、どのような活動を行い、どのように撤退したのか、実態を明らかにし、米軍とどのような関係にあり、沖縄住民の生活にどのような影響を与えたのか考察することである。「チャイナ部隊」の駐留の根拠となった協定とその運用の実態に注目し、沖縄、日本、中国、アメリカ側の分析、日系・沖縄系二世の役割の分析を実施し、「チャイナ部隊」について多角的にアプローチする。 2018年度は、沖縄県立図書館、沖縄県公文書館、琉球大学図書館等において、研究課題に関する文献・文書等の収集とその整理・検討に努めた。加えて、「チャイナ部隊」が駐留していたうるま市の屋慶名周辺におけるインタビュー調査、同じく那覇市の首里石嶺周辺におけるインタビュー調査、元「チャイナ部隊」隊員に対するインタビュー調査を実施した。 学会発表としては、沖縄文化協会2018年度第三回東京公開研究発表会において、「占領初期沖縄における「チャイナ部隊」と米中間協定―沖縄からの搬出物資を中心に」、「敗戦直後の沖縄における“二世”の存在―チャイナ部隊研究から派生して」と題して二つの口頭報告を行った。前者では、中国側の資料を用いて協定の内容、搬出物資の記録等を分析した。後者では、ハワイにおける日系・沖縄系二世のリクルートの詳細と沖縄県の地域誌における日系・沖縄系二世の記述等を分析した。これらの成果について2019年度中に論文として発表予定である。 また、これまでの成果を当事者や関係者をはじめ広く社会に還元するため、沖縄県紙や北米沖縄県人会などに伝えるなど関係構築に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、沖縄側の分析について、資料収集、インタビュー調査を複数回実施し、一定の成果をあげることができた。「チャイナ部隊」が駐留していた地域におけるインタビュー調査では、うるま市の屋慶名周辺、那覇市の首里石嶺周辺、それぞれについて貴重な情報が得られた。 加えて、新たに、当時沖縄に駐留していた元「チャイナ部隊」隊員を対象にしたインタビュー調査の機会を得たため、高齢であるという事情や研究の今後の方針に与える影響を鑑み、2018年度に優先して実施することとした。多くの情報や資料を得ることができ、中国側の分析について大きく進展した。そのため当初予定していたハワイやワシントンや台湾での実地調査は2019年度以降の予算で実施する計画に変更した。 成果の作成・発表としては、口頭報告について概ね予定通り実施した。論文や調査地域における報告会としては、2018年度の後半にインタビュー調査により得られた中国側の成果も含めて、2019年度以降に行うこととし準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の成果を踏まえ、沖縄、中国、アメリカ側について、研究分担者や研究協力者と連携し、専門性を踏まえて設けた担当の班ごとにまた共同で、資料収集やインタビュー調査を実施し、分析を進め、成果を口頭報告や論文として発表する。 中国側については主に台湾の国史館、中央研究院近代史研究所にて、対米交渉を担当した行政院・物品供応委員会・外交部の文書を収集・分析する。部隊を実際に編成・運用したと推測される国防部について文書の収集・分析をする。 アメリカ側については、主にアメリカ公文書館で協定に関する文書資料、写真資料調査を実施し、締結交渉や協定文書を検討する。 日系・沖縄系二世については、主にハワイ大学図書館、JICA横浜海外移住資料館、沖縄県公文書館で資料の収集・分析を実施する。 研究課題全体として、それぞれの班の成果を踏まえて多角的に関係を分析する。また新たに得られた元「チャイナ部隊」隊員に対するインタビューについて、沖縄の地域紙なども含めて、早い段階で情報や成果を発表する。首里石嶺では初めてとなる「チャイナ部隊」についての報告会を実施し、地域に成果を還元する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは主に旅費が少なかったことによっている。旅費については、初年度調査で、ロサンゼルスにおける元「チャイナ部隊」隊員に対するインタビュー調査の実施を優先して組み入れる必要が生じ、ワシントン、ハワイ、台湾での現地調査を2019年度以降に変更したためである。翌年度分として請求した助成金は、これらの地域への旅費とし、アメリカ公文書館、台湾国史館、ハワイ大学などで資料調査を実施する。
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