2019 Fiscal Year Research-status Report
現代都市再開発期における「労働-生活」空間の編成と社会的排除に関する国際比較分析
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18K01974
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田中 研之輔 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (30513204)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 「労働ー生活」空間 / 社会的排除 / エスノグラフィー / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代都市再開発期における「労働-生活」空間の構成と社会的排除に関する、<社会-空間の動態的関係>を国際比較分析に取り組んでいる。具体的 には、1 国内の労働現場の空間・組織編成に関する研究と、2 米国とアジア諸国での労働現場のフィールド調査の結果をそれぞれ著作として研究成果を発表して いく。その上で3国内・海外のそれぞれの事例をこれまで申請者が17年間にわたり継続的に行ってきた『「労働-生活」空間の国際比較都市社会学』をまとめる集大成の3年間として位置づけている。
なお、本研究は、先端事例分析法(Extended Case Method)を用いた国際比較研究として世界的にみても注目に値する 研究に取り組んでいる。 これまで研究を積み重ねていく上で、一方で、都市の社会-経済空間の変容を分析しつつ、他方で、そうした変容によって生み出される社会的不平等や格差の現実を照射し、その両者の動態的過程の分析を進めている。都市周縁層という社会的属性を対象とすることで、従来の狭義の貧困研究や不平等研究に陥らない研究を提示することができる。
本年度の成果として多元的資本論を整理した『プロティアン』(日経BP社)を出版した。従来、労働現場に社会学的なアプローチで入り込むことは手薄であった。空間は労働現場に限られたものではあるが、特に、組織編成について詳細な分析を 行った。また、海外での比較調査に向けて、現地フィールド調査も継続してきた。しかしながら、コロナ ・パンデミックに伴い海外調査は中断しており、研究遂行の一部見直しを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、社会調査法の質的調査を主要分析手法として実施するものであり、研究の遂行に大規模で高額な研究設備投資は必要としない。資料整理やデータ分析 については、現行勤務先の法政大学の研究室を常時利用している。国際比較文化研究の土台となる国内外でのフィールドワークを実施する上で、動画・静止画撮 影機器、ICレコーダー等は準備し、計画的に研究に取り組んでいる。 特に、都市の社会-経済空間の変容を分析しつつ、他方で、そうした変容によって生み出される社会的不平等や格差の現実を照射し、その両者の動態的過程を分 析してきた。都市周縁層という社会的属性を対象とすることで、従来の狭義の貧困研究や不平等研究に陥らない研究を進めている。 研究を進めていく中で、一つ一つ掲げた問いの解明をすすめてきた。だが、質的調査法の調査特性もあり、国内での研究調査と比較して、国外での研究調査の分 析と公開に時間を要している。その点は、研究計画通りではあるが、迅速な研究成果のアウトプットに至ってない点でもある。特に、現代都市再開発期に顕著な 空間的隔離の今日的手法である「ジェントリフィケーション」・「ゲイティッド・コミュニティ」の余波で都市の周縁へと追いやられ「単身低賃仮宿、路上生 活」をする者たちの<社会層>の労働世界と生活世界との相補分析。次に、都市周縁層の社会的排除に関する社会-空間過程分析を展開してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目指すゴールは、現代都市再開発期における「労働-生活」空間の構成と、社会的排除の施策を強化する社会動向について、フィールドデータと最新の 理論的視座とを対話させ、国際比較の視点を導入して緻密な社会学的実証分析を展開していくことである。その点で、本研究は、ピエール・ブルデューが警鐘を 鳴らしている新自由主義国家がもたらす「生活の破壊」の内在的分析かつ国際比較分析として、独創性を持っている。それゆえに1~2年といった短期間での研 究期間では、充実した内在的な国際比較分析を実施することは難しい。これまで行ってきた米国での現地調査と、国際ネットワーク組織を最大限に活用し、さらに、今後計画的に遂行することで、大規模都市再開発期における社会周縁層の空間的滞留と社会的排除に関する先端的な国際比較研究として学内外で注目される 研究成果をまとめていく。なお、本研究は、世界社会学会会長を務めたマイケル・ブラウォイ教授が提唱した先端事例分析法(Extended Case Method)を踏襲し た上で検証していく。その成果として「組織エスノグラフィー」と「キャリアエスノグラフィー」を出版し、適宜、学会報告も行う。コロナ ・パンデミックに伴い、国内での調査研究に従事する。
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Causes of Carryover |
研究は計画的に遂行しているが、コロナ ・パンデミックにより手続きの遅れが一部生じた
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Research Products
(2 results)