2018 Fiscal Year Research-status Report
The Implementation of the CRPD and Civil Society in East Asia
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18K01981
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長瀬 修 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (60345139)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人権 / 障害者 / 東アジア / 市民社会 / 差別 / 共生 / 国際条約 / インクルージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
★研究計画に従って着実に研究を進め、研究成果をすでに発表した。第1の成果として、日本における障害者権利条約の実施状況と課題を明らかにする『障害者権利条約の実施と日本―批准後の日本の課題』を2018年12月22日に川島聡(岡山理科大学)と共編著で信山社より刊行した。障害者権利委員会委員である石川准(静岡県立大学)を含む、全部で23名の各分野の専門家が参画した。研究代表者自身は「障害者権利委員会―報告制度」を担当した。 ★東アジアの日本、韓国、中国、台湾の障害学研究者が集う、障害学国際セミナー2018には、共同議長として参画した。遊ぶ権利をテーマとして2018年10月に国立台湾大学にて開催された同セミナーにおいて、「障害者権利条約第30条、贅沢か、生きる意味か」と題する報告を行った。これ以外でも、イギリス、韓国、台湾、中国における国際学会・研究集会でも報告を行った。また、研究成果を地元の市民社会、障害者組織と具体的に共有する障害者権利条約パラレルレポートワークショップをパラグアイ、ラオス、香港、シンガポール、そしてアセアン障害フォーラム(シンガポールにて)対象でそれぞれ実施した。 ★2018年12月22日に東京大学で開催した公開講座「障害者権利条約の実施――批准後の日本の課題」(研究代表者・松井彰彦「多様性の経済学」が主催し、本科研は共催)では、自ら報告した他、障害者権利委員会の石川准委員(静岡県立大学)を招聘した。 ★所属する立命館大学生存学研究センター主催の連続セミナー「障害/社会」第11回(2018年5月18日、京都キャンパスプラザ:本科研は共催)にて、「障害者権利条約の報告と審査――台湾(中華民国)政府審査とその経験」と題する報告を行った。 ★刊行に向けて、モンゴル、韓国、中国、香港、台湾の研究者との英文出版企画(Springer社)の準備に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
★研究実績の概要で述べたようにすでに一部の研究成果を公刊し、社会還元を行った。『障害者の権利条約の実施』(長瀬修・川島聡編著、2018年12月、信山社)は本研究の研究成果を盛り込み、各分野の最新の知見を反映し、2020年夏に予定されている障害者権利条約の初回審査に向けた「アカデミックなパラレルレポート」の役割も果たしている。審査に向けて、障害者権利委員会は日本への事前質問事項の起草作業を2019年初夏に開始し、同年9月に採択する。そうした過程にも役立つ時期に、しかも現役の障害者権利委員会委員も加わって刊行できた意義は大きい。 ★2018年10月に国立台北大学で開催した障害学国際セミナー(East Asia Disability Studies Forum)2018においても、東アジアの主要な障害学研究パートナーと意見交換を行った。台湾ではこのセミナーを機に、東アジアで日本(2003年)、韓国(2015年)につづいて3番目の障害学会を設立した。 ★本研究は実践的な社会還元をも目指している。その観点からは、障害者権利条約の審査という複雑な過程における障害者組織を含む市民社会との連携を重視し、パラグアイ、ラオス、香港、シンガポールにおいて、それぞれの障害者組織と市民社会を対象として、またシンガポールにおいてアセアン障害フォーラムを対象として、本研究の成果をもとにワークショップを開催できた。障害者権利委員会は、条約交渉過程の”Nothing About Us Without Us “(私たち抜きに私たちのことを決めないで)という障害者の参画を求める言葉に象徴されるように、審査過程においても市民社会の障害者組織からの情報提供を非常に重視している。本研究は、具体的にそうした前述の各国の障害者組織とも連携することで、国連の審査過程、ひいては障害者の権利保障にも貢献している。
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Strategy for Future Research Activity |
①<文献研究>本研究に関連する障害学、東アジア地域研究、国際人権法学、市民社会論の文献の他、障害者権利委員会が作成する総括所見や一般的意見の分析を行う。②<研究会の開催>国内での小規模な研究会を法的能力や障害者の参加などのテーマに関して開催する。2019年3月に障害者権利委員会副委員長に就任した石川准・静岡県立大学教授との意見交換や研究会を開催する。また、所属する生存学研究センターが主催し、参加国・地域で持ち回り開催がされている障害学国際セミナーを意見交換や情報収集の場として活用する。2019年度は中国の国立武漢大学の研究者を主要なホストとして10月に武漢で開催される。③<研究パートナーとの共同分析>障害者組織をはじめとする市民社会が障害者権利条約の(a)交渉、(b)署名・批准、(c)国家報告の作成、(d)パラレルレポート作成、(e)障害者権利委員会による事前質問事項作成、(f)総括所見を作成するジュネーブでの建設的対話の際のブリーフィング、(g)総括所見の実施、それぞれの過程でどのように関与もしくは、取り組んできたのかを、市民社会自身の観点から明らかにするための分析を各国・地域の研究者と開始する。意見交換はメール、メーリングリストやスカイプで行うほか、②のセミナー等を活用する。④<障害者権利委員会・障害者権利条約締約国会議の傍聴>審査が行われる障害者権利委員会(ジュネーブ)の第21会期、第11回・第12回事前作業部会、そして条約実施に大きな役割を担っている第12会期障害者権利条約締約国会議(ニューヨーク)でどのように障害者組織と市民社会の参加が行われているのか、観察を行う。⑤<研究成果の論文・書籍での刊行>すでに開始している研究成果を英語で書籍として刊行するシュプリンガー社との取り組みを進める。
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Causes of Carryover |
計画通り使用したが端数が生じたため次年度、物品購入に使用する。
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Research Products
(24 results)