2020 Fiscal Year Research-status Report
The Implementation of the CRPD and Civil Society in East Asia
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18K01981
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長瀬 修 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (60345139)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東アジア / 人権 / 障害学 / 市民社会 / 差別 / 共生 / 国際条約 / インクルージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
★新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響を受けて、障害者権利条約の実施とコロナの影響を主テーマとして研究を推進した1年となった。次の3オンラインセミナーを開催した。 (1)オンラインセミナー「新型コロナウイルス感染症と生存学」(2020年5月8日)。初の緊急事態宣言下において、情報アクセシビリティ(手話と文字)を確保した先進的な取り組みを実施した。 (2)障害学国際セミナー2020オンラインセミナー:東アジアにおける新型コロナウイルス感染症と障害者(2020年7月18日)。東アジアの日本、韓国、中国、台湾の障害学研究グループが毎年集う障害学国際セミナーは、本来、2020年9月に京都で開催予定だったが、コロナの影響によってオンラインで開催された。英語で開催した本セミナーは、日本の傍聴者向けに日本語の同時通訳と手話・文字通訳を提供することができた。そして、コロナ禍以前から存在していた課題が、コロナという新たな現象と結びついた時に深刻化している。具体的には、情報面・物理面(医療機関を含む)のバリアや施設・病院への収容、地域生活資源の不足、政策決定過程への参画の壁、障害者の生命の価値を低くみる考え方などである。同時にオンラインでのアクセシビリティを確保する契機ともなりうることが明らかにされた。 (3)障害学国際セミナーオンライン特別セミナー「新型コロナウイルス感染症と東アジアの障害者」(2021年2月27日)。障害学国際セミナー本来の形態である日本語、韓国語、中国語の3言語間のオンラインでの同時通訳による開催を実現し、前回同様、日本の傍聴者向けの手話、文字通訳の提供に成功した。基調講演は国連障害者の権利に関する特別報告者であるジェラルド・クインが行い、「新型コロナウイルス感染症と医療への平等なアクセス」と、「新型コロナウイルス感染症と生活水準・社会保障」に関するパネルを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
★東アジアにおける障害者権利条約の実施に関する分析を、書籍や国際会議を通じて着実に進めることができたため。アジア経済研究所の小林昌之編『アジアの障害者の法的能力と後見制度――障害者権利条約から問い直す』(生活書院、2021年3月10日刊行)の1章として「台湾における障害者の法的能力」を執筆した。同書は台湾以外ではインド、韓国、タイ、中国、日本、フィリピンにおける障害者権利条約12条(法的能力)の実施状況を分析している。 ★本研究の成果を国内外のオンラインや対面会議で積極的に報告し、社会的に共有することができた。報告したテーマは、①新型コロナウイルス感染症のパンデミック下で明白となったエイジズム(年齢主義)と障害の交差性、②障害者権利条約と日本における政治力学、③障害者権利条約実施におけるジェンダーや年齢との交差性、④障害者組織をはじめとする市民社会からの情報(パラレルレポート)と障害者権利条約の実施、⑤新型コロナウイルス感染症と障害者の権利の促進、⑥障害者権利条約初回審査と労働及び雇用といったテーマで報告を続けた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に入った新型コロナウイルス感染症の世界的流行は研究対象の東アジアにおける障害者権利条約の実施と市民社会に深刻な影響を及ぼしている。具体的には2020年夏に予定されていた日本の審査は、2021年度以降に延期となっている。しかし、そうした環境下でも研究を引き続き、着実に推進する。 ①<文献研究>障害学そして障害者権利条約全般、特に委員会が新型コロナウイルス感染症の影響を中心的に取り上げている11条(危険な状況及び人道上の緊急事態)を含め、関係する文献研究を継続して行う。障害者権利委員会が作成する新たな総括所見や一般的意見(第27条:労働及び雇用)も検討する。 ②<研究会の開催>対面での開催は困難となってしまったが、オンラインでの開催を検討する。所属する立命館大学生存学研究所が主催し、本研究が共催する障害学国際セミナーは年度内に立命館大学京都キャンパスにおいて開催予定であるが、新型コロナウイルス感染症の影響を見定める。必要に応じて、再度のオンライン開催も検討する。その際には文字通訳や手話通訳を確保する形を継続する。 ③<研究パートナーとの共同分析>引き続きオンラインでの連絡を密にして、継続して分析に取り組む。 ④<障害者権利委員会の傍聴>2021年度に予定されている日本の初回審査を含め、新型コロナウイルス感染症の影響を見極めながら、ジュネーブの障害者権利委員会に出席し、条約実施の国際的動向を把握し、東アジア各国・地域への影響を把握する。 ⑤<研究成果の論文・書籍での刊行>発表を適宜、進める。包括的な研究報告としての出版以外にも、論文等で時宜を得た社会的発信を行う
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により、海外での調査が不可能となったため。新型コロナウイルス感染症の動向に慎重に留意しながら、海外における調査も推進する。
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Research Products
(11 results)