2020 Fiscal Year Research-status Report
The Historical Sociology of Retreat and Permeation of American Multiculturalism
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18K01982
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
南川 文里 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60398427)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多文化主義 / 人種 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本研究課題および2014年から17年まで研究助成を受けた基盤研究C研究課題「アメリカ型多文化主義の成立と展開をめぐる歴史社会学的研究」(課題番号26380720)の研究成果として、単著の研究書『未完の多文化主義:アメリカにおける人種、国家、多様性』を東京大学出版会から刊行した。同書は、1964年の公民権法制定以後の連邦政府の公民権政策にアメリカ型多文化主義の政策的起源を位置づけ、アメリカ型多文化主義が社会運動や社会理論と相互作用しながら、半世紀にわたってアメリカの人種関係を変化させる過程を議論したものである。1990年代に反多文化主義的な政治文化が広がり、アメリカ型多文化主義が変容する過程を分析した第7章「反多文化主義の住民運動」、8章「多人種主義の挑戦」、9章「多様性への多文化主義」が本研究課題による直接的な成果となっている。また、2019年度に行った現地調査にもとづき、アメリカ型多文化主義の制度的枠組を形作った連邦政府による人種統計の変化とそれを支える知的基盤の変化をテーマとして、アメリカ社会学会(American Sociological Association)および日本社会学会でそれぞれ研究報告を行った。さらに、2020年大統領選挙やブラック・ライヴズ・マター運動への一般的関心の高まりに対応し、本研究課題の成果を一般向けに新聞、雑誌、インターネット・メディア等で解説・報告する機会を持った。一方、当初予定していたアメリカでの現地調査については、新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限により中止となった。また、学会報告については国内外すべてオンラインでの開催に変更となったため、成果発表のための旅費についても執行しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年1月に研究成果として単著『未完の多文化主義』を刊行することができた。同書の7章・8章・9章は本研究課題の直接的な研究成果である。また、2020年11月のアメリカ大統領選挙やブラック・ライヴズ・マター運動の広がりのなか、本研究課題の成果を新聞・一般誌など、一般向けのメディアでも発信する機会を得た。一方で、新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限によって、研究課題を進めるための米国現地調査を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年に発表した研究成果を英語論文として発表する機会を模索する。また、2021年度に主に取り組む研究課題として、アメリカ型多文化主義の代表的な政策の一つであるアファーマティヴ・アクションをめぐる2010年代以降の論争を扱った論文執筆に取り組む。2020年度に実施予定であった米国での海外調査については、2021年度に実施予定であるが、引き続き渡航や調査が制限される場合は、研究期間の延長についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染対策による海外渡航の制限により、2020年度に予定していた海外調査が実施できなかった。また、国内外の学会がオンライン開催となったため、成果発表のための旅費についても執行されなかった。海外調査については、2021年度の実施を計画している。
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