2021 Fiscal Year Research-status Report
美容を目的とする医療の国際比較--権力関係と親密性
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18K01983
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
谷本 奈穂 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90351494)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 美容 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「医療化」が進展する現代社会において、美容を目的とした医療の実態を調査すること、その社会的意味とそのメカニズムを明らかにすることである。美容を目的とした医療とは、美容外科手術、およびメスを使わない美容医療がある。以下合わせて「美容医療」と呼ぶ。方法には多角的な研究手法を組み合わせた混合研究法を用いることにしており、アンケート調査、インタビュー調査、メディアの内容分析(テキストマイニング)、文献調査を組み合わせた方法を採用している。 2021年度は、元来2020年度に行う予定であった、これまでの調査の分析、および美容医療の実態調査(国内)、韓国での美容整形クリニックのフィールド調査を行い、それらをまとめた総括を行うつもりでいた。また同じく2021年度に研究成果発表の場として、メルボルン大学にて女性の身体と美容に関するワークショップを計画していた(こちらも渡航先に許可を得ていた)。しかし、2020年度と同じく2021年度も、コロナウィルスの蔓延により、国内の医療機関への調査、韓国へのフィールド調査、およびメルボルン大学での研究成果発表、いずれも実行できなかった。状況を鑑みて、再度延長を行い、次年度に持ち越すことにした。 こういった状況下でも、可能な限り研究を持続し、「ロマンティックラブ・イデオロギーというゾンビ」を『現代思想』9月号(青土社)、および「昭和五〇年代の美容言説---身体のフォーディズム」福間良明編『昭和五〇年代論---「戦後の終わり」と「終わらない戦後」の交錯』(みずき書林)を執筆した。いずれも、研究目的と直接的または間接的に関連のある論文であり、かつ、書籍として刊行されることで社会的なインプリケーションを持つ実績であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も、2020年度に引き続き、コロナウイルスによる混乱が研究を阻害した。特に医療機関は国内外を問わず混乱しており、調査は難しかった。2020年度より企画していた、メルボルン大学での「女性の身体と美容に関するワークショップ」もメルボルンへの渡航が困難であったため、中止された。当初の研究計画より遅れが生じているといえる。 とはいえできる限りで研究は進めた。インターネットを利用しながら、インタビュー調査を再開し、美容医療経験者4名のインタビューデータを得た。さらに、今後の研究の進展を見据えて、美容雑誌と美容にまつわる単行本を購入した。また「女性の身体と美容に関するワークショップ」については、2022年度に向けた打ち合わせのみオンライン上で行った(場所の変更も現在検討されている)。 そして、女性たちの美容への意識を雑誌記事や広告などを通史的に取り上げ、「昭和五〇年代の美容言説---身体のフォーディズム」というタイトルで論文として著し、それは単行本の1編となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究の総括を行いたい。当初の研究目的にそい、アンケート調査及びインタビュー調査の詳細な分析を通して、美容を目的とした医療の実態と、美容医療の社会的意味とそのメカニズムを明らかにしていく。 また2022年度内にコロナウィルスによる混乱が収束すれば、韓国の美容整形クリニックのフィールド調査を再開したい(すでに2019年度に行っている)。 2022年度は最終年度として、研究成果の発表を行う予定である。一つはメルボルン大学にて女性の身体と美容に関するワークショップであるが、コロナウィルスによる混乱状況があれば、場所を変更したワークショップも検討する。もう一つは、社会学関連の書籍に、美容整形にまつわる論文を掲載する予定である。最後に、いくつかの研究会や学会で、本科研費に関わる研究内容を発表する。社会状況に応じて、柔軟に対応していくが、少なくとも総括としての研究成果発表は、論文と発表という形で行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度、および2021年度は、コロナ渦の影響を受け、当初予定していた調査が実施できず、またこちらも予定していた海外でのワークショップも開催不能となったため、次年度仕様が生じた。今後も、感染状況に応じて対応していくが、少なくとも総括としての研究成果発表は、2022年度中に行う予定であり、その関連費用などに使用する予定である。
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