2018 Fiscal Year Research-status Report
逸脱当事者の活動によって逸脱・社会問題の解決を目指す現代的施策の社会学的研究
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18K01984
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 哲彦 関西学院大学, 社会学部, 教授 (20295116)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬物政策 / ハーム・リダクション / PUD / 逸脱 / 当事者活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はいくつかのPUDの活動の記述を中心に調査研究を行う予定であったが、PUDとの予定を調整した結果、2019年4月にポルトガルで開催されるInternational Harm Reduction Conference 2019にお互いに出席して会合を持つことにした。そこで年度はまたぐが予算をそのように使用した。また一方で、2018年10月にカナダでは犯罪化されていたカンナビス(大麻)使用が合法化されることになり、その新たな局面においてカンナビス使用者や販売業者のみならずカンナビス研究者の活動も活発化した。違法薬物の合法化という事態は世界的に珍しいものであるため(ウルグアイに次いで2例目)、またカンナビスが合法化されることでPUDによる活動をはじめとした薬物使用をめぐるハーム・リダクションの動きに変化が生じるため、逸脱当事者の活動の成果という局面に関する資料を得る意味もあり、カナダで2回にわたり調査を行った。まずは元使用者のソーシャルワーカーにインタビューを行い、さらに合法化に際してローカルな準備作業を行ったトロント市の公衆衛生局でインタビューを行った。さらにカンナビスをめぐっては脱逸脱化の先進的地域であるバンクーバー市の研究者やカンナビス販売業者、カンナビス使用の活動家らにインタビューを行うとともに、カナダで近年始まった学際的カンナビス研究の学会に出席して様々な関係者と意見交換を行った。これらにつけ加えて、このような逸脱当事者による活動によって逸脱再定義を行う活動とその傾向については、より一般的な社会学的枠組で議論を行う必要があるため、薬物使用の他にもその傾向が見られるセックスワークなどの活動についても当事者や支援者と何度か意見交換を行った。これは外国のPUDが、地域によっては、セックスワーカーとの連帯を重視していることがあるからでもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の調査対象予定者との面談などに時間的なズレが生じたが(そのズレは結果的に回復した)、逆にそのためにこの期間にしか得られない貴重なデータを得る機会に恵まれ、またそのことによって国際的な文脈に研究を置くための資料が増えた。同時に、最終年度に検討すべきなデータも、あらかじめ並行して収集可能な機会を準備することが出来たことから、比較的順調かもしくはそれ以上と考えられるペースで研究が進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年4月末にポルトガルで開催された国際学会において、予定していたPUDとの面談が実現し、いくつかの角度で実りのある資料を得ることが出来たため、それらを踏まえて他のPUDの調査を行い、それらのディスコースと実践の特徴からPUDの活動を記述する予定である。また同時に、いくつかの国際的な出版企画に招待されているので、それらに参加して研究の刊行を実現しつつ、当初の予定通りPUDの国際的なネットワークを訪問し、これまでの調査研究で得られた資料以上の成果をあげる機会を作る予定である。さらに、最終年度に予定している、より一般的な逸脱の社会学を再考するプラットフォームを準備するために、薬物使用以外の諸活動についても議論し考察する機会を作る予定である。
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Causes of Carryover |
すでに上でも述べたが、当初予定していた年度内のPUDの調査機会を、互いに参加する2019年4月末開催の国際学会の場に設定したため、その分を次年度に繰り越して使用する必要が生じたためである。
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