2019 Fiscal Year Research-status Report
逸脱当事者の活動によって逸脱・社会問題の解決を目指す現代的施策の社会学的研究
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18K01984
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 哲彦 関西学院大学, 社会学部, 教授 (20295116)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬物使用 / 薬物政策 / 薬物依存 / ハーム・リダクション / 逸脱論 / プロボノ / セックス・ワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の様々な研究活動のうち、主なものについて述べておく。まず4月にポルトガルで開催された、国際ハーム・リダクション学会HR19に参加し、前年度より予定していた各地のPUDのメンバーや、PUDと協力して活動を行っているセックスワーカーらとの会合を持ち、インタビューを行った。また、各地で活躍するストリート法律家らにも話を聞き、制度的な支援の届かない逸脱者に対する、街頭での援助の実際などについて情報を得た。さらに各分会に参加して、薬物使用を伴う各種活動について議論した。加えて、アジアから参加したPUDのメンバーと秋に再度面会する約束を取り付け、後に実現した(9月バンコク)。同じく4月には、学術誌の編集委員会において議論し、本課題研究に関連する特集の企画を、担当編集委員として統括することになった。それに伴い、本研究課題に関連しうる逸脱当事者らに研究の協力を要請し、次年度の特集実現に向けて準備することになった。秋には、前出のアジアのPUDを支援するNGOスタッフらから誘われ、カトマンドゥで開かれた第8回アジア・プロボノ学会に参加し、とくに東アジア地域の薬物政策史について話をし、それを踏まえてPUDへの支援について議論した。プロボノ学会は初めてであったが、南アジアの薬物政策担当者らと情報交換するなど、実り多い機会となった。10月には香港で開かれた薬物政策国際学会第1回アジア研究会に出席し、昔から交流のあるアジア各地の研究者も含めた薬物政策の研究者やPUDメンバーらと意見交換した。とくに、いくつかのセッションで代表者が以前『ドラッグの社会学』で提示した知見について関心を喚起したのは、今後の展開を考えても重要だった。11月にはJCCA(日本カトリック依存症者のための会)の研修会に招かれて「ハームリダクションの正しい理解をめぐって―フィールドワークの経験から」と題して講演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に予定していたPUDとの面談などは、先方の都合などもあって2019年度に振り分けたが、国際ハーム・リダクション学会HR19参加時に合わせて行うことによって、むしろ交流の連鎖など望ましい結果を生んだ。とくにアジア地域からの参加者の交流と連帯は、その後の調査研究活動に貢献することとなり、2019年度秋に初めて開催されたアジア地域の研究会など、結果的に予想以上の成果を生むことができた。また、最終年度に予定している理論的考察のために、逸脱各領域での記述の集積を逸脱当事者の協力を得ながら2019年度に進めることができたのが、進捗に対する大きく貢献するといえる。またそのほかにも国際的に刊行された研究書に論考を寄せるなど、大きな成果もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
周知の通り、コロナウィルスの流行によって、国際的な移動が大きく制限されている現状では、国際学会は当然のことながら、国内学会でさえ、開催が危ぶまれている。とくに本研究課題は、国内的にはこれまで無視されてきた逸脱当事者の活動を議論の中心においているために、国際的な調査研究活動が必須であるが、それが行えるかどうか分からない状況にある。とはいえ、すでに4月から5月にかけて何件か参加したのだが、さまざまな研究会や学会などがWebinarとして開催されており、そのような形で参加もしくは報告する可能性がある。理論的考察などその他の予定については、計画通りもしくは計画以上に進めることができると予想される。とくに成果の公表については、計画時にはなかった学術誌での特集企画などにより、本研究課題がもくろむ新しい逸脱論や逸脱研究領域の立ち上げに寄与することが予想できるだろう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行により、3月に予定していた出張が出来なかったため、出張費分の使用額が残ったが、これについては2020年度の流行の沈静化を待って、同じく出張に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Book] Risk and Substance Use: Framing Dangerous People and Dangerous Places2020
Author(s)
T.M.J. Antin, Virginia Berridge, Charlotte De Kock, Karen Duke, Christopher Hallam, Rachel Herring, Geoffrey Hunt, Axel Klein, Torsten Kolind, Susanne MacGregor, Emma Milne, James Nicholls Aileen O'Gorman, Gary R. Potter, Emile Sanders, Akihiko Sato, Camille May Stengel, Betsy Thom, Alfred Url, Marie Claire Van Hout
Total Pages
262
Publisher
Routledge
ISBN
978-1-138-49124-3