2018 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of the History of Weber-Reception in Contemporary Sociology
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18K01995
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 紀行 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20212037)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マックス・ヴェーバー / 社会学史 / 社会学理論 / 知識社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は1年間ハイデルベルク大学社会学科に客員研究員として滞在したので、現代ドイツの社会学界におけるヴェーバー受容の中心人物であるW. シュルフターをまず取り上げることにし、そのヴェーバー受容の1980年代以降の展開について研究した。「W. シュルフターによるヴェーバー的研究プログラムの再構成-現代社会学理論の文脈の中のヴェーバー受容(下)」(『京都社会学年報』第26号)がその成果である。これはシュルフターの理論社会学的なヴェーバー研究を概観したものとしてはおそらく日本で最初の研究である。そこでは彼のヴェーバー受容が一貫して同時代の社会学理論(特にパーソンズ、ルーマン、ハーバーマス)との対話を通して展開されたことや、彼の研究が異質な社会学的アプローチの総合ではなくヴェーバー固有のアプローチを他のアプローチから際立たせることを当初から目指していたことが明らかになった。これに関連してシュルフター本人にインタビューを行ったほか、その学問的後継者であるThomas Schwinn教授(ハイデルベルク大学)とも意見交換を行うことができた。 これに先立って、以前から進めてきたWolfgang Schluchter, Religion und Lebensfuehrung (1988)第2巻の日本語訳(部分訳)を完成させ、『マックス・ヴェーバーの比較宗教社会学-宗教と生活態度』(風行社、2018年)として刊行した。これはシュルフターのヴェーバー受容において重要な意義をもつ著作であり、上記の論文でも利用されている。 この過程で、パーソンズ以後の社会学におけるヴェーバー受容にとっての最も重要な出発点として、パーソンズにおけるヴェーバー受容を再考察する必要について認識を新たにし、この問題に関する文献の収集と解読を始めたが、研究成果を年度内に論文として公刊するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」欄にも記載したシュルフター『マックス・ヴェーバーの比較宗教社会学』の翻訳作業が、当初2017年度中に終わる予定であったにもかかわらず2018年度になってようやく完了したため、シュルフターにおけるヴェーバー受容の研究に取り掛かるのが予定より若干遅れることになった。また、その後はシュルフターと一時期協力関係にあったハーバーマスを取り上げる予定だったが、シュルフター研究の過程で、ハーバーマスよりも先にパーソンズにおけるヴェーバー受容の特徴や問題点について明らかにする必要があると考えるに至り、2番目の研究課題をパーソンズのヴェーバー受容に切り替えた。 当初の予定ではヴェーバー受容の行われる環境としての知識人界・社会学界の構造の分析をヴェーバー受容史に組み込むことを考えていたが、これに関しては必要な資料・文献を収集して読み始めた段階であり、シュルフター研究に関してはこの観点を論文に取り入れることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はないが、「現在までの進捗状況」欄に記載した通り、ハーバーマスにおけるヴェーバー受容の研究を後回しにして、まずパーソンズにおけるヴェーバー受容を分析することにした。パーソンズのヴェーバー解釈やヴェーバー受容に関してはすでに先行研究の蓄積があるので、それらを参照・検討するとともに、2018年度の在外研究中に収集した文献・資料を活用しながら、研究を進めていきたい。また今年度以降はテクスト内在的研究にとどまらず、ヴェーバー受容の知識社会学的背景にまでできるだけ分析を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度に在外研究で滞在していたドイツからの帰国に際して、当初の予定を変更して帰国の途中で文献調査のために2日間ロンドンに滞在することにしたため、帰国が2019年4月2日になった。これに伴い、帰国のための旅費を次年度の科研費から支出しなければならなくなったので、必要な金額を使用せずに次年度に残した。なお、実際にかかった旅費は次年度使用額とほぼ同額の171,348円であった。 上記の旅費を除いた2019年度の科研費はほぼ予定通りなので、使用計画に特に変更はない。
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Research Products
(2 results)