2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of the History of Weber-Reception in Contemporary Sociology
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18K01995
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 紀行 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20212037)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マックス・ヴェーバー / 社会学史 / 社会学理論 / 知識社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主としてS. N. アイゼンシュタットにおけるヴェーバー受容に関する研究に取り組んだ。彼の主要な歴史社会学的著作と併せて理論的著作も検討し、彼のマクロ社会学理論がたどった変化を跡づけるとともに、その過程で彼がヴェーバー社会学にいかなる解釈を行い、そのいかなる部分を継承したかを考察した。 アイゼンシュタットは構造機能主義の影響下にあった60年代の著作においてすでにその基本的過程に疑問を抱いており、社会システムの制度化が構造分化への趨勢によって一義的に決まるものではなく歴史的条件によって左右されること、その過程で特殊なタイプの社会的行為者の果たす役割が重要であることなどを想定していた。60年代末から80年代初頭にかけて機能主義に代わる多様な社会学的アプローチが提唱された際、彼は構造主義や交換理論、シンボリック相互作用論等を幅広く検討した上で、比較制度分析から「軸文明」や「多元的近代」の概念を中核とする比較文明分析へと転換を遂げた。 アイゼンシュタットのヴェーバーへの関心は、E. シルズの影響を受けたカリスマ概念の解釈や「プロテスタンティズムの倫理」テーゼの検討という形ですでに60年代に見られたが、80年代以降は『世界宗教の経済倫理』の共同研究への参加を通してさらに深化した。ヴェーバーにおける理念と利害関心の相互関係のマクロ分析や社会秩序の構築における知識人の中心的役割への洞察はアイゼンシュタットに継承されており、これらのパースペクティヴが彼の構造機能主義からの離脱においても重要な意味をもったと考えられる。他方、個々の文明を自己完結的な分析単位として扱い、それらの影響関係を考慮しない傾向はヴェーバーとアイゼンシュタットの両者について指摘される問題点であり、その克服はグローバル化の進展という条件のもとで彼らのアプローチを発展させていく上での課題として残されている。
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