2018 Fiscal Year Research-status Report
過疎化とインフラ縮小化の相互関係に関する社会学研究 ―小学校統廃合・維持問題から
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18K01999
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山下 祐介 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90253369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 過疎過密 / 少子化 / 学校統廃合 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域の人口にあわせて地域になくてはならないインフラの縮小が行われると、そのインフラ縮小によって人口が縮小し、さらなるインフラ縮小が余儀なくされるという悪循環のプロセスの有無を検証するのが本研究の課題である。とともに、そうした悪循環を断ち切る手法についても検討することを目指した。本研究はこの仮説検証を、とくに次世代再生産に深く関わる過疎化地域の小学校統合を題材に行っている。 インフラと人口配置の歴史については、歴史文献(古代、中世、近世、現代)を渉猟するとともに、東京都、広島県、岩手県、鹿児島県等で調査を行った。とくに道の変遷と、用水施設の設置に注目し、これらのインフラ整備と集落の生成発展にどのようなつながりがあるのかを検討した。本年度は素材の収集となり、詳細な検討は次年度以降になる。調査地を増やすことも検討する。 学校統廃合については、岩手県一関市、広島県福山市、福島県白河市でその現状について調査を行った。いずれも統廃合をめぐって地域社会との対立や不安の増大が生じており、その解決を探る手法が求められていることを痛感した。 そのことをうけ、インフラ維持の手法を探るために、あえて大都市型の学校の調査を急遽企画した。東京都八王子市を対象に、各小学校に設置されている学校運営協議会について調査を実施し、中間的なとりまとめを作成中である。小中学校の問題については、行政の縦割り構造が、インフラ配置と人口配置の亀裂を生んでいるのではないかと、さらなる作業仮説をたてて次年度以降に検証する予定である。 また一関市では、国際リニアコライダー建設計画が進行中であり、この巨大科学インフラについても検討を行った。その他のインフラについても来年度以降にさらに考察を深めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は情報収集を目指し、一部調査地を変更しながらも、各地で調査を実施できた。各地の調査は2年度以降も続ける予定である。ただし、これらの統廃合が与える影響はこの研究期間では当然検討できない反面(いずれも統廃合の目標年度が後ろに伸びている)、行政よりも地域社会の側にアプローチしたので、インフラ維持の方策についても検討せざるをえない状況となった。そのため調査項目を増やすなど、研究計画の変更を行わざるをえなかった。しかしこれらのアプローチにより、行政の内部構造や地域と行政の関係性がもたらす計画矛盾の問題等、新しい知見もえられたので、研究そのものは概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
地域とインフラの関係については、文献のみでは検討が不十分になるので、2年度以降も引き続き現地調査や資料収集に努め、知見を広げたい。 また学校統廃合問題については、事後調査一箇所、統廃合進行中の調査が2箇所あり、このうち統廃合進行中のものに関しては直接的に仮説検証に結びつくものではない可能性があるが、事象そのものは社会学的価値が高いと思われるので、新たな仮説の導入なども含めて検討したい。また八王子市および鹿児島県の事象は、学校が地域活性化に貢献したり、学校存続を地域が実現した例となり、これらは仮説を裏側から支える事例となりそうなので、次年度に精査を行いたい。 この他、国際リニアコライダー計画の分析から、福島第一原発事故のような巨大インフラ導入とその崩壊がもたらす事例の再検討も、この研究の中で必要と考えられるようになった。これまで行ってきた自身の研究を再度振り返り、知見に活かしていく方法を探りたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究を実施していく中で調査地について当初計画からいくつかの変更を行う必要が生じたため、当初予算からの実際の使用において費目間の調整を行う必要が生じた。かつそのなかで福島県白河市などについては、先方の事情により、次年度に2度目の調査実施を見送ったりしたため一部研究費をプールすることとした。人件費を用いた資料分析や、次年度に見送った調査については、本年度分の予算を一部次年度に回すことによって調整し、次年度に実施する予定である。
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Research Products
(5 results)