2018 Fiscal Year Research-status Report
原発避難者・帰還者の動態と「共同性」の模索に関する研究―双葉町と楢葉町を中心に
Project/Area Number |
18K02002
|
Research Institution | 八戸学院大学 |
Principal Investigator |
齊藤 綾美 八戸学院大学, 地域経営学部, 准教授 (70431484)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 行真 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60455110)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 原発避難 / 地域社会 / 双葉町 / 楢葉町 / 共同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は①本研究の課題と位置づけについて、文献資料を用いて整理するとともに、②(1)双葉町の行政区長に対するヒアリング調査のためのプレ調査、(2)調査票の作成・修正・確定、(3)行政区長に対する本調査(一部)、(4)ネットワーク拡大、③(1)楢葉町の住民諸団体に対するプレ調査、(2)諸団体に対する本調査(「ほのぼの」、「うしお会」、「もろもろ塾」、「わらじ組」、「かかしチーム」、「藍染め会」)、(3)ネットワークの拡大を行った。 「2.進捗状況」で示すとおり、②については調査対象を当初計画以上に対象を拡げたため、本調査を十分に行っておらず成果を発表するまでには至っていない。ただし行政区17に対して、4割以上の地区に対する調査を終えた。他方、①③については、一定の成果を得たことから、齊藤(2019)Matsumoto(2018)等として発表した。齊藤論文では楢葉町の「共同性」に着目する理由を、田中重好がいう「共同性」をもとに整理した。そのうえで、楢葉町の「共同性」が、原発避難前後にどのように変容したのか、いかなる状況にあるのかについて楢葉町のボランタリー・アソシエーションを中心に検討した。松本の論文は主に楢葉町関連のアソシエーションの動向を整理した。大熊町を含め、双葉町以外の原発避難自治体は帰還をはじめているが、帰還には多くの困難が伴っている。国からの全町避難を初期に解除した楢葉町の事例を深く調査・検討することは、その他の原発避難を経験した自治体にとっても重要である。 なお、今年度の補助金は、文献の購入や、移動先でのレンタカーなどにも用いたが、最も金額が多かったのが旅費である。その理由は(1)調査対象者の日程調整が難しく、1回の出張での複数対象者へのヒアリングが困難であること、(2)双葉町の行政区長をいわき市周辺在住者だけでなくその他の地域在住者にも拡大したことなどである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「1.研究実績の概要」で示したとおり、本年度は主に①~③を実施した。そのうち、①、②(1)、(2)、③(1)、(2)、(3)については計画どおり進んでいる。しかし、②(3)の「双葉町の行政区長に対する本調査」に、当初計画より時間がかかる見通しとなった。その理由は、次のとおりである。当初計画では、いわき市周辺在住の現行政区長を対象としていた。しかし、調査拒否や、病気や連絡不能等の理由で接触不可能な対象者もいたことから、全行政区長に対象を拡大し、また、震災当時の区長に接触可能な場合は、ヒアリングを実施している。 また、双葉町の行政区長以外の対象者についても、ヒアリングを実施予定だったが、アポイントメントをとったあとでの、対象者の直前キャンセルが2回続いたため、実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
「2.現在までの進捗状況」で述べたとおり、「双葉町の行政区長に対する本調査」には計画変更があり、当初計画より時間を要するため、2019年度~2020年度半ばまで実施する。とくに、今後はいわき市外各地に居住する行政区長/元区長にヒアリングを行う。行政区長に関するアウトプットは2020年度中に行う。双葉町の行政区長以外の対象者に関するアウトプットも同様である。その他の事項については、当初の計画どおりにすすめる。 2019年度は、行政区長調査と若い世代へのヒアリングを中心にしつつ、比較的活発な活動を行っている楢葉町の行政区の動きなどについても調査し、それらを論文等に整理する。また、研究のレビューについても必ずしも十分には実施できていないため、文献の収集と読解、研究の位置づけを継続して行う。 なお、行政区長その他の対象者に接触することや調査許可を得ることは容易ではない。そもそも接触できない場合や、接触できても調査拒否となることも少なくない。調査対象者をできるだけ増やす工夫として、自治体や市民団体の活動やイベントに積極的に参加することや、既にヒアリングを行った対象者とのつながりを活用し、ネットワークを拡げることに努める。
|
Research Products
(3 results)