2021 Fiscal Year Research-status Report
原発避難者・帰還者の動態と「共同性」の模索に関する研究―双葉町と楢葉町を中心に
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18K02002
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
齊藤 綾美 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (70431484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 行真 近畿大学, 総合社会学部, 教授 (60455110)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原発避難 / 共同性 / 双葉町 / 地域活動 / 災後10年 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から続くコロナ禍により、当初計画どおりに研究が進まなかったところはあるが、本研究によって一定の成果を収めることができた。すなわち、2018年度の研究開始当初からこれまでに至る本研究の成果となる論文および、書き下ろし論文を収載した報告書を作成し(齊藤 2022a)、双葉町の伝統芸能に関する1本の論文(齊藤 2022b)を発表し、さらに、双葉町の行政区長に対するヒアリングの成果となる1本の論文を投稿することができた。最後の論文は2021年度中に刊行されていないが、査読を終え校正作業中である(2022年5月上旬現在)。いずれも、他の社会学研究者がほとんど研究してこなかった、原発避難後における双葉町の住民/町民の組織化の状況や「共同性」をめぐる課題について、経験的調査をつうじてデータを集約し、論文として整理・公表したことに意義がある。また、記録に残りづらいミクロな原発災害の被害を示すことができる。 齊藤(2022a)は、これまでの研究成果を集約するとともに、コロナ禍において停滞する町民の活動や、災後10年という節目を経て変わりつつある組織のあり方、双葉町の帰還を目前にした町民の動向など、新たな局面を記録・整理し、「共同性」が変化しつつある状況を明らかにしている。なお、齊藤(2022a)には松本による、近年の富岡町における住民の動向に関する論文も収録されている。 齊藤(2022b)は、双葉町の一行政区の伝統芸能である「じゃんがら念仏踊り」に関わる人びとの震災前後の動向を整理することをつうじて、齊藤(2022a)と同様に、双葉町やそれより小地区の「共同性」の変容と震災後に直面する課題を解明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も2020年度と同様にコロナ禍の影響を受け、2017年当初に計画したとおりの研究活動はできなかった。研究停滞の要因は、調査対象者がかかわる組織の活動が低調であったことや、移動・行動の制約があったこと、高齢の対象者が多いために対面調査を自粛したことなどである。とはいえ、「研究実績の概要」で示したとおり、複数の研究成果を発表することができた。報告書の作成が2021年度末にずれこんだため、調査対象者に調査結果を還元し、またフォローアップ調査を行う作業が2022年度の作業として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べたとおり、報告書などの研究成果について調査対象者に説明し、研究成果を還元する作業が残っている。コロナ禍が落ち着いていれば対面で説明等を行うが、状況的に難しいばあいは、郵送での送付や電話での説明を計画している。
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Causes of Carryover |
研究成果の還元を研究計画に含めていたが、調査報告書の作成が年度末にずれこんだために、還元が年度内に終了しなかったからである。今後は共同研究者や調査対象者へ研究成果を郵送し、可能であれば直接対面で説明・調査後の御礼をしたい。
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Research Products
(2 results)