2019 Fiscal Year Research-status Report
社会的少数者の家族成員間での体験共有と関係性の(再)構築をめぐる研究
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18K02003
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
黒坂 愛衣 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (50738119)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハンセン病 / 聞き取り調査 / 優生保護法問題 / 差別 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査研究活動として、今年度もハンセン病家族訴訟に関するフィールドワークのほか、ハンセン病回復者およびその家族からの聞き取り調査を継続して実施してきた。さらに仙台地裁(および仙台高裁)で係属中の優生保護法裁判の参与観察を行なった。また、ハンセン病家族訴訟に関する学習会を当事者および一般市民の参加を得て仙台市内で実施した(参加者120~130名程度。市民団体「優生手術被害者とともに歩むみやぎの会」との共催)。 研究成果の発表としては、主なものとしては①マニラで開催されたGlobal Forum of People’s Organizations on Hansen’s Disease(主催:公益財団 笹川保健財団)でのハンセン病家族訴訟についての招待講演、②雑誌「世界」(岩波書店)でのハンセン病回復者および家族の聞き取りの連載、③その他、雑誌「ヒューマンライツ」3月号(部落解放・人権研究所)でのハンセン病家族訴訟に関する論考などがある。 社会貢献活動としては、①国連ハンセン病差別撤廃報告者(Special Rapporteur on the Elimination of Discrimination Against Persons Affected by Leprosy and Their Family Members)であるアリス・クルス氏の日本公式訪問にあたり、ハンセン病退所者との面談、および優生保護法裁判の原告および関係者との面談をセッティングした。また、専門家ミーティングにも参加した。②「人権教育啓発リーダー養成講座」(主催:徳島県立人権教育啓発推進センター)など、研究成果を生かした講演活動を各地で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のフィールドのひとつである「ハンセン病家族訴訟」が2019年6月28日に原告勝訴の判決を迎え、その後11月には「ハンセン病家族補償法」が制定された。社会問題としてのハンセン病家族の問題は、ひとつの山場を迎えることになった。これに呼応し、本研究課題の調査活動として、熊本地方裁判所での裁判、原告団集会、国の控訴断念を求める国会ローラー行動、内閣総理大臣その他担当大臣による謝罪など、補償法制定にいたる経過の参与観察を重ねることができた。また、ハンセン病回復者の本人とその家族をセットにした聞き取りも進めることができた。さらに、優生保護法問題についての仙台地方裁判所および高等裁判所での裁判をめぐる参与観察も、昨年度から引き続き行なった。調査研究の遂行はおおむね良好であった。 研究成果の発表についても、国際フォーラムでの報告、聞き取り事例の発表(10回連載)等、精力的に実施できた。 年度末からは新型コロナ感染症の影響により調査に出かけるのが困難になったが、今年度中の進捗としてはおおむね順調であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の影響により、今後しばらくは、聞き取り調査やフィールドワークが困難な状況が続くと推定される(とりわけ本研究の調査対象者は、ハンセン病回復者や優生保護法被害者など高齢の人々となっており、オンラインでのインタビューも厳しい)。最終年度は、あらたな調査よりも、これまでに蓄積してきた聞き取りの音声データの文字おこしに力を入れる。先行研究との対質のうえで、研究成果の発表を行なう。
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Causes of Carryover |
当初は当該年度2月~3月に聞き取り調査を入れる予定で、旅費のための経費を残しておいたところ、新型コロナウイルス感染症の影響により調査を実施することができなくなってしまったため(勤務する大学での出張停止の指示があった)。
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