2020 Fiscal Year Research-status Report
社会的少数者の家族成員間での体験共有と関係性の(再)構築をめぐる研究
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18K02003
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
黒坂 愛衣 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (50738119)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハンセン病問題 / 聞き取り / 家族 / 裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、今年度は思うようにフィールドワークができなかった。ハンセン病療養所への訪問が不可能であったのはもちろんだが、外の社会で暮らす療養所退所者やハンセン病家族も、現時点で聞き取りをお願いできる方々のほとんどが高齢であり、わたしが生活する東北地方からは遠い地域で暮らしているため、調査を断念せざるをえなかった。部落差別問題や原発事故避難をめぐる問題の調査も実施できなかった。研究テーマの性質上、Zoom等を利用した遠隔での聞き取りは、新しく出会った語り手との信頼関係の構築には向かないため、難しいと考えている。今年度、新しい語り手からの聞き取りができたのは1回、大阪府ハンセン病回復者支援センターを8月に訪問し退所者からの聞き取りを実施したのみである。その他、過去すでに聞き取りを実施した語り手たちからの補充聞き取りを、Zoomを利用して実施した。またハンセン病問題に関するZoom学習会を実施し、当事者たちとの信頼関係の構築・維持、および情報収集につとめた。 成果物として埼玉大学大学院の紀要にハンセン病問題の聞き取り2編をまとめた。そのうちのひとつは、母方祖父がハンセン病であった女性と、その母親、そして母方伯母からの聞き取りである。祖父がハンセン病療養所に入所した後に生まれた孫娘にまでも、地域社会から強烈な偏見が向けられたことが、家族間で語られている。この女性の場合、ハンセン病であった祖父との同居期間がなかったために、ハンセン病家族訴訟による「被害」認定の埒外であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
わたしはフィールドワークを中心に調査研究の実施計画を立てている。昨年度までは概ね良好な進行具合であったが、今年度は新型コロナウィルス感染症の影響により、思うように進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の拡大/収束の具合によるが、可能であれば次年度、ハンセン病問題・部落差別問題・原発避難をめぐる問題の聞き取り調査を実施したい。難しければ、過去に行なった聞き取りの文字起こしをして記録化をすすめる予定である。すでに数多く蓄積しているハンセン病問題の聞き取りデータを中心に、社会的少数者の家族成員間の“体験の共有”と,それによる関係性の再構築をめぐる問題について検討をすすめる。
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Causes of Carryover |
フィールドワークを中心に調査研究の実施計画を立てていたが、今年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響のため調査をほとんど実行できず、次年度使用額が生じることとなった。次年度は調査研究が実行できることを期待している。
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