2018 Fiscal Year Research-status Report
「親」として相応しい素質とは何か:アメリカ占領下日本における生殖の管理
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18K02013
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
豊田 真穂 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20434821)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リプロダクティブ・ライツ / 日本占領 / 優生保護法 / 人工妊娠中絶 / 断種/不妊手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、性や生殖のコントロールに焦点を当てることで、アメリカ占領下の日本における「女性解放」政策の歴史的意義を再評価することにある。その際、人工妊娠中絶や断種/不妊手術をも含めた広義のバースコントロールをめぐる政策を検討することによって、占領下でどのような「家族」が規定されたのかを検討する。バースコントロールは出産や家族に直接的に介入することを認める一方で、性・生殖をめぐる女性の自己決定権を保障するという意味で「女性解放」の基礎ともいえる。占領下のバースコントロールをめぐる政策を分析することは、どのような素質をもつ女性が「解放」の対象とされ、一方で生殖の管理下に置かれたのはどのような女性なのかを明らかにすることになる。それはとりもなおさず、占領軍を日本女性の「救済者」と描くのではない、「女性解放」政策の新たな理解につながると考える。 今年度は、主に不妊手術および中絶を定めた優生保護法に関する占領軍の政策をみていった。不妊手術に関しては、米国の断種法とそれに関連する議論がどのように行われていたのかについて明らかにした。中絶については、当初は人口調整弁のひとつとして位置づけていた占領軍の公衆衛生局が、中絶を容易にできるようにしようとした日本側の動きを規制するようになっていく過程を明らかにした。中絶をめぐる占領軍の態度の変化は、中絶件数が大幅に伸びることによって出生率がさがっていく日本側の動向と同時に、日本の産科医の権益拡大をめざす動きに呼応していたこともあきらかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、中絶に関する占領軍の政策の変化を明らかにすることができ、その研究成果は『人口政策』というタイトルの著書に掲載予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、人工妊娠中絶や不妊手術を一部合法化した優生保護法について、占領政策の大きな枠組みを決定する極東委員会(FEC)の資料を精査することによって、人口政策に関してどのような議論があったのかということ、および経済復興政策の要因となり得たことを実証的に検証していきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に出張予定だった引揚港での資料調査について、すでに研究を進めている松原洋子立命館大学教授に話を聞く機会があり、事前調査を行ってから次年度以降にいくことの有用性を確認したため。
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Research Products
(2 results)