2020 Fiscal Year Research-status Report
関係者の証言に基づく改正貸金業法の10年:リスクの社会化の応用可能性と新たな問題
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18K02016
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
大山 小夜 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (10330333)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 過剰債務 / 専門職 / 社会運動 / 改正貸金業法 / 被害 / 過払い金バブル / 逸脱処理の制度化 / 破産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドキュメント調査と非対面型インタビュー調査を行った。「改正貸金業法の10年」を明らかにするため、改正貸金業法の法制化運動(以下、「過剰債務運動」)から現在までの約40年間のデータ(統計・雑誌・会報・議事録・手紙等)を検討し考察した。明らかになったことは以下のとおりである。 1.日本の過剰債務運動に特徴的な「被害」概念や問題当事者(過剰債務者、以下、「被害者」)による告発型の自助組織(いわゆる「被害者の会」)は、公害や冤罪に取り組む弁護士ネットワークの伝統から発展的に継承された。 2.「被害」概念は、弁護士・司法書士などの異業種間の連携、また、「被害者」においては逸脱の可視化(体験談・告発・報道)を促した。専門職と「被害者」は、過剰債務を、貸金業による「高金利」「過剰貸付」「過酷な取立」による複合産物=被害とする認識のもと、「貸金業への法規制」を通じた「被害撲滅」という課題に向かって、動的で相補的な関係を形成した。 3.「被害」概念は状況依存的である。目的志向的な制度を支える社会のリアリティや力量の程度によって、「過酷な取立」→「高金利」→「過剰貸付」の順で受容されていった。 4.逸脱の制度的解決は、それが高度な分業化、専門化を必要とするほど、「当事者不在」「専門職主導」になりがちである。職能団体の包摂力の低下、専門職界における過当競争や被用者化は、上記した「当事者不在」「専門職主導」の動きを加速する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響拡大によって、予定していた現地調査、対面型インタビュー調査がほぼできなかったためである。代わりに、収集した資料等を読み込むドキュメント調査に力を入れ、ドキュメント調査で浮き彫りになった論点等については電子メールやオンライン会議システム等を用いた非対面型インタビュー調査を行ったが、部分的、補足的なものにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、現地調査や対面型インタビュー調査は、できたとしてもかなり限られたものになると思われる。こうしたことから、次年度においては、本年度の経験と反省を踏まえ、非対面型インタビュー調査を積極的に活用したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響拡大により、当初予定していた現地調査、対面型インタビュー調査がほぼできなかったことによる。
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